「大量の案件が同時に降ってくる」「時間も情報も足りない」「判断を先延ばしすると、状況が悪化する」
これはインバスケット試験の話――ではなく、戦国時代の武将、織田信長が毎日直面していた現実でもあります。
反乱を起こす家臣、同盟国との微妙な関係、財政問題、新戦術の導入、城下町の統治…。信長は常に「すべてに対応したら破綻する」状況で意思決定を迫られていました。
そして信長が取った戦略は、まさにインバスケット試験で高評価を取る人の思考パターンそのものだったのです。
✅ 織田信長の意思決定スタイル
・今、放置しても致命傷にならないものは後回し(優先順位付け)
・戦略は自分、実行は部下(権限委譲・委任)
・感情ではなく、事実と成果で判断(組織視点の意思決定)
私もインバスケット試験の時は苦労したクチですがコンサルタントとして多くの昇格試験受験者をサポートして思うのは、インバスケットで苦戦する人には共通のパターンがあるということです。
それは「完璧な回答を書こうとする」こと。
信長なら即却下する思考です。
合格者は違います。「捨てる勇気」と「70点を量産する思考」で、確実に得点を積み上げていきます。
この記事では、織田信長も実践していた「インバスケット式思考」を現代の試験対策に落とし込み、高得点を取るための7つのコツを具体的なテンプレートと例を交えて解説します。
✅ この記事を読むと分かること
・優先順位付けの判断基準と「緊急度×重要度マトリクス」の使い方
・時間切れを防ぐ「最初の5分」の使い方
・「捨てる案件」の見極め方と委任のコツ
・回答を量産する「型」とテンプレート
・60分・90分別の時間配分テンプレート
インバスケット試験で求められる「本当の能力」とは
まず、インバスケット試験で採点者が何を見ているかを理解しましょう。
多くの受験者は「どれだけ多くの案件を処理できるか」が評価されると思っています。
でも、それは半分正解で半分不正解です。
採点者が見ているのは「判断のプロセス」
インバスケット試験で評価されるのは、案件の処理数ではなく「判断の質」です。
信長が評価されたのも、単なる戦闘の勝利数ではなく「限られた資源で最大の成果を出す判断力」でした。
具体的には、以下の観点で採点されます。
✅ インバスケットの評価ポイント
・優先順位付け:緊急度と重要度を正しく判断できているか
・意思決定の質:論理的な根拠に基づいた判断ができているか
・組織視点:自分だけでなくチーム・上司・他部署を意識しているか
・一貫性:複数の回答に矛盾がないか
・委任力:適切に部下や関係者に任せられているか
つまり、「管理職として適切な判断ができるか」を見られているのです。
100点を目指す人が落ちる理由
ここで重要な事実をお伝えします。
❌ 不合格者の典型パターン
・全案件に「完璧な回答」を書こうとする
・1つの案件に時間をかけすぎる
・後半の案件が手つかずで終わる
・回答の方向性がバラバラになる
100点を目指す人ほど、この罠にはまります。
なぜなら、インバスケット試験は「全問正解」を求めていないからです。
合格者の共通点は「捨てる勇気」
では、合格者はどう違うのか。
私がサポートしてきた合格者には、明確な共通点がありました。
✅ 合格者の思考パターン
・「全部やらない」と最初から決めている
・70点の回答を量産する意識
・迷ったら3秒で決める
・捨てる案件を先に決める
・見直しは「漏れ」より「一貫性」を優先
この「捨てる勇気」こそが、インバスケット攻略の最大のコツです。
【コツ①】緊急度×重要度マトリクスを30秒で使いこなす
インバスケットの優先順位付けで最も使えるフレームワークが、「緊急度×重要度マトリクス」です。
ただし、多くの受験者は使い方を間違えています。
4象限の判断基準を明確にする
マトリクスの4象限を、具体的な行動指針に落とし込みましょう。
✅ 4象限の対応方針
①緊急かつ重要(即対応)
→ 自分で今すぐ処理。回答を詳しく書く。
②緊急ではないが重要(計画的に)
→ 方針と期限を明記。フォロー計画を示す。
③緊急だが重要ではない(委任)
→ 部下や関係者に任せる。指示を簡潔に。
④緊急でも重要でもない(後回し)
→ 最小限の対応。または「保留」と明記。

迷ったら「影響範囲」で決める
「これは緊急?重要?」と迷う案件は必ず出てきます。
そんなときは、「影響範囲」で判断してください。
✅ 影響範囲の判断基準
・誰に影響するか:顧客>上司>他部署>自チーム>自分
・何人に影響するか:多い方が重要度が高い
・どの程度の損害か:金額・信用・納期で判断
顧客に影響する案件は、迷わず「重要」に分類しましょう。
マトリクス活用のNG例と正解例
❌ NG例
「クレーム対応」→ 緊急だから最優先!
(→ 内容を見ずに判断している)
✅ 正解例
「クレーム対応」→ 顧客への影響大・金額も大きい
→ 緊急かつ重要。自分で即対応+上司への報告を明記
キーワードだけで判断せず、「誰に・どの程度」の影響があるかを常に考えましょう。
【コツ②】最初の5分で全案件をスキャンする
インバスケット試験で最も重要なのが、「最初の5分」の使い方です。
多くの受験者は、1つ目の案件からいきなり回答を書き始めます。
これが時間切れの最大の原因です。
案件の全体像を把握する理由
なぜ最初にスキャンするのか。理由は3つあります。
✅ スキャンが必要な3つの理由
①案件同士の関連性を把握できる
(例:A案件とC案件は同じ顧客に関係)
②時間配分を事前に決められる
(重い案件が何個あるか分かる)
③捨てる案件を早めに決められる
(全体を見ないと判断できない)
スキャン時のチェックポイント3つ
スキャンでは、以下の3点だけを確認します。
✅ 5分スキャンのチェックポイント
①差出人は誰か(顧客・上司・部下・他部署)
②期限はいつか(今日中・今週中・未記載)
③何を求められているか(判断・指示・報告・相談)

スキャン結果の記録フォーマット
スキャンした結果は、簡単なメモで残しておきましょう。
✅ スキャンメモの例
案件1:顧客クレーム → ★★★(即対応)
案件2:部下の相談 → ★☆☆(後回し可)
案件3:他部署依頼 → ★★☆(委任検討)
案件4:上司報告 → ★★★(期限今日)
案件5:社内調整 → ★☆☆(最小限対応)
★の数で優先度を可視化すると、処理する順番が一目で分かります。
【コツ③】「捨てる案件」を先に決める
スキャンが終わったら、次にやるのは「捨てる案件」を決めることです。
「捨てる」という言葉に抵抗がある人もいるでしょう。
でも、これはインバスケットで最も評価されるスキルの1つです。
捨てる=無視ではない
まず誤解を解きましょう。
インバスケットで「捨てる」とは、無視することではありません。
✅ 「捨てる」の正しい意味
・後回しにする:「○○の件は来週対応」と明記
・委任する:「○○さんに対応を依頼」と指示
・保留にする:「情報収集後に判断」と方針を示す
つまり、「自分で今すぐ詳しく回答しない」という判断を下すことです。
「後回し」と「委任」の使い分け
捨て方にも種類があります。
✅ 捨て方の使い分け
後回しにする案件
→ 重要だが緊急ではない。自分が対応すべきだが今日じゃなくていい。
委任する案件
→ 緊急だが重要ではない。部下や関係者でも対応できる。
保留にする案件
→ 情報が不足している。判断材料が揃ってから対応。
捨てる判断の具体例
❌ NG:捨ててはいけない案件
・顧客からの緊急クレーム
・上司から「今日中に」と指示された報告
・部下の重大なミスへの対応
✅ OK:捨てていい案件
・来月の会議の日程調整
・部下でも対応できる定型業務
・情報収集中で判断できない案件
【コツ④】回答は「型」で量産する
インバスケットで時間を節約する最大の武器が、「回答の型」です。
毎回ゼロから考えていては、時間がいくらあっても足りません。
案件タイプ別の回答テンプレート
案件は大きく4タイプに分かれます。それぞれに回答の型を用意しましょう。

✅ 案件タイプ別の回答テンプレート
①指示系(部下への指示)
宛先 → 指示内容 → 期限 → 報告方法
②報告系(上司への報告)
件名 → 現状 → 原因 → 対応策 → 今後の予定
③調整系(他部署への依頼)
宛先 → 依頼背景 → 依頼内容 → 期限 → 協力のお願い
④判断系(意思決定が必要)
結論 → 理由 → 具体的アクション → フォロー計画
指示・依頼・報告の書き分け
同じ案件でも、宛先によって書き方が変わります。
✅ 宛先別の書き分け
部下への指示:簡潔に。5W1Hを明確に。
上司への報告:結論から。判断を仰ぐ場合は選択肢を提示。
他部署への依頼:背景説明を丁寧に。協力へのお礼を忘れずに。
顧客への対応:誠意を示す。具体的な対応と期限を明記。
回答例:緊急クレーム案件の場合
具体例で見てみましょう。
✅ 回答例:顧客クレーム案件
【顧客への対応】
宛先:○○様
件名:製品不具合のお詫びと対応について
このたびは多大なるご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。
本日中に代替品を発送いたします。
原因調査の結果は、○月○日までにご報告させていただきます。
【部下への指示】
宛先:田中(担当者)
・本日15時までに代替品を発送手配
・原因調査を品質管理部と連携して進める
・進捗を明日朝に私に報告
【上司への報告】
宛先:山田部長
・○○社よりクレーム発生(概要)
・本日中に代替品発送で対応中
・原因調査後、改めてご報告します
このように、1つの案件で複数の対応を書くと評価が上がります。
【コツ⑤】時間配分は「逆算」で決める
インバスケット試験で時間切れを防ぐには、事前に時間配分を決めておくことが必須です。
60分・90分別の時間配分テンプレート
試験時間に応じた時間配分テンプレートを紹介します。

✅ 60分試験の時間配分
・スキャン:5分
・優先順位付け:5分
・回答作成:45分(1案件3〜5分×10案件程度)
・見直し:5分
✅ 90分試験の時間配分
・スキャン:5分
・優先順位付け:5分
・回答作成:70分(1案件4〜6分×15案件程度)
・見直し:10分
残り10分で何をすべきか
残り10分になったら、回答作成をやめて見直しに入りましょう。
✅ 残り10分のアクション
①未回答の案件がないか確認
②回答の一貫性をチェック
③宛先・期限の記載漏れがないか確認
④時間があれば、重要案件の回答を補強
時間切れを防ぐチェックポイント
❌ 時間切れになる人の特徴
・1案件に10分以上かけている
・スキャンをせずにいきなり書き始める
・「完璧な回答」にこだわっている
・見直し時間を確保していない
1案件あたりの時間を5分以内と決めておくと、時間配分が安定します。
【コツ⑥】判断に迷ったときの「3秒ルール」
インバスケットでは、「迷い」が最大の敵です。
1つの案件で5分以上迷っていると、後半の案件が処理できなくなります。
迷いは減点の始まり
迷っている時間は、何も生み出しません。
しかも、迷った末に出した回答は、たいてい最初の直感と同じです。
であれば、最初から直感で決めてしまう方が効率的です。
判断を早める3つの問いかけ
迷ったときは、以下の3つの質問を自分に投げかけてください。
✅ 3秒で判断する3つの問い
①「この案件を放置したら、誰が一番困る?」
→ 顧客なら即対応、自分だけなら後回し可
②「この案件は自分でないと対応できない?」
→ 部下でもできるなら委任
③「今日中に対応しないと何が起きる?」
→ 大きな損害がないなら明日でもOK
この3つに答えれば、3秒で優先度が決まります。
「正解がない」案件への対処法
インバスケットには、「正解がない」案件も含まれています。
これは受験者を迷わせるためのトラップです。
✅ 正解がない案件の対処法
・「どちらが正しいか」ではなく「どちらを選んだか」を明確に
・選んだ理由を論理的に書く
・選ばなかった選択肢へのフォローも示す
大事なのは「決めること」です。迷って何も書かないのが最悪の選択です。
【コツ⑦】見直しは「漏れ」より「一貫性」を優先
最後のコツは、見直しの方法です。
残り5分で何をチェックすべきか、優先順位をつけましょう。
採点者が重視する一貫性とは
インバスケットの採点では、「回答の一貫性」が重要視されます。
✅ 一貫性のチェックポイント
・同じ人物への指示が矛盾していないか
・優先順位の判断基準がブレていないか
・組織のルールや方針に沿っているか
・全体として「この人に任せたい」と思える対応か
見直し時のチェックリスト

✅ 見直しチェックリスト(優先順)
□ 全案件に何らかの回答があるか(白紙はNG)
□ 宛先は正しいか(部下への指示が上司宛になっていないか)
□ 期限を明記しているか
□ 回答同士に矛盾がないか
□ 上司・顧客への報告連絡は入っているか
最後の5分でやるべきこと
✅ 残り5分のアクション
①未回答チェック:白紙の案件がないか確認(1分)
②一貫性チェック:矛盾する指示がないか確認(2分)
③形式チェック:宛先・期限の漏れを確認(1分)
④仕上げ:時間があれば重要案件を補強(1分)
漏れを全部潰すより、一貫性を保つ方が得点に直結します。
よくある失敗パターンと対策
最後に、受験者がやりがちな失敗パターンと対策をまとめます。
失敗①:全案件に完璧な回答を書こうとする
❌ 失敗パターン
・1案件に10分以上かける
・詳細な指示書を書こうとする
・「この回答で合っているか」と迷い続ける
✅ 対策
・70点の回答を量産する意識に切り替える
・1案件5分以内のルールを守る
・「完璧」より「処理した事実」を重視
失敗②:緊急案件ばかりに時間をかける
❌ 失敗パターン
・「緊急」と書いてある案件を最優先
・「重要だが緊急ではない」案件を後回し
・結果、戦略的な案件が手つかず
✅ 対策
・緊急=重要ではないことを意識
・「影響範囲」で重要度を判断
・緊急だが重要でない案件は委任する
失敗③:回答の方向性がバラバラ
❌ 失敗パターン
・案件Aでは「部下に任せる」、案件Bでは「自分で対応」と矛盾
・同じ部下に対して、厳しい指示と優しい指示が混在
・組織の方針と矛盾する判断をしている
✅ 対策
・回答前に「自分はどんな管理職か」を決めておく
・判断基準を一定に保つ(例:顧客優先、部下育成重視など)
・見直し時に矛盾をチェック

よくある質問(FAQ)
Q1. インバスケット試験で時間が足りないのですが、どうすればいいですか?
A. 全案件に完璧な回答を書こうとせず、70点の回答を量産する意識に切り替えましょう。最初の5分で全案件をスキャンし、「捨てる案件」を先に決めることで時間配分が安定します。
Q2. インバスケットで優先順位をつけるコツは?
A. 緊急度×重要度のマトリクスを使い、4象限に分類します。迷ったときは「影響範囲(誰に・どの程度)」で判断すると早く決められます。
Q3. インバスケットの回答に正解はありますか?
A. 唯一の正解はありませんが、評価されるポイントは明確です。判断の根拠が論理的であること、指示に一貫性があること、組織全体を見た対応ができていることが重視されます。
Q4. インバスケットの練習方法を教えてください
A. まず本番と同じ時間制限で1セット解き、時間配分の感覚をつかみます。その後、回答の型を使って「量産」する練習をしましょう。最低3セットは本番形式で練習することをおすすめします。
Q5. インバスケットで「捨てる」とはどういう意味ですか?
A. 「捨てる」とは無視することではなく、「後回しにする」「部下に委任する」といった対応を指します。全案件を自分で処理しようとせず、マネージャーとして適切に振り分けることが評価されます。
まとめ:今日からできる1つのアクション
インバスケット攻略の7つのコツを紹介しました。
✅ インバスケット攻略7つのコツ
①緊急度×重要度マトリクスを30秒で使いこなす
②最初の5分で全案件をスキャンする
③「捨てる案件」を先に決める
④回答は「型」で量産する
⑤時間配分は「逆算」で決める
⑥判断に迷ったときの「3秒ルール」
⑦見直しは「漏れ」より「一貫性」を優先
最も大事なのは、「100点を目指さない」という思考の転換です。
冒頭で紹介した織田信長は、命と組織の存亡を背負った「リアル修羅場の意思決定者」でした。レベルは違えど、限られた時間・不完全な情報・同時多発の課題の中で「何を優先し、何を切り、何を任せるか」を判断する構造は、インバスケット試験と本質的に同じです。
70点の回答を量産する。捨てる勇気を持つ。
これができれば、インバスケット試験は怖くありません。
✅ 今日からできる1つのアクション
まずは「緊急度×重要度マトリクス」を紙に書いて、目の前の仕事を分類してみてください。日常業務でマトリクスを使いこなせれば、本番でも迷わず判断できるようになります。
インバスケットは知識試験ではありません。覚悟を伴う優先順位付けのテストなんだと割り切ると、意外とスピーディーに処理できますよ。
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