「課題:〇〇を強化する」
昇格試験の論文やケーススタディで、こんな書き方をしていませんか?
実は、「〇〇を強化する」は課題ではなく対策(施策)です。この混同は採点者から見ると一発でわかります。そして、ここが曖昧なままだと、どれだけ内容が良くても論理の流れが崩れてしまうんです。
「課題と問題の違い」を理解した次のステップとして、今度は「課題と対策(施策)の違い」を押さえておきましょう。ここを正確に書き分けられるようになると、採点者から「論理的思考ができる人だ」と評価されます。
✅ この記事を読むと分かること
- 「課題」と「対策(施策)」の本質的な違い
- 昇格試験で頻出するNG表現と正しい書き方
- 課題→対策の論理的な展開テンプレート
- 論文・ケーススタディ別の実践的な書き分け方
- 今日から使える自己チェック法
なお、「課題と問題の違い」についてはすでに別記事で詳しく解説しています。まだ読んでいない方は先にそちらを確認してから、この記事を読み進めることをおすすめします。
「課題」と「対策」、何が違うのか?
まず、定義を整理しましょう。昇格試験では「問題→課題→対策」という3つの概念を明確に区別して書くことが求められます。
3つの概念の定義と関係
| 用語 | 定義 | 問いかけ |
|---|---|---|
| 問題 | 現状とあるべき姿のギャップ(困りごと) | 「何が起きているか?」 |
| 課題 | 問題を解決するために取り組むべき目標・テーマ | 「何を達成すべきか?」 |
| 対策(施策) | 課題を達成するための具体的な行動・手段 | 「どうやって実現するか?」 |
この3つは「なぜ?→何を?→どうやって?」という論理の流れで繋がっています。
✅ 3段階の論理展開(基本形)
問題:新規顧客の獲得数が目標の50%に留まっている
↓
課題:新規開拓チャネルの多様化(何を達成すべきか)
↓
対策:デジタルマーケティングを活用したリード獲得施策の導入(どうやって実現するか)
「課題」が「対策」になっていないか確認する簡単な方法
書いた文章が「課題」か「対策」かを判断する最も簡単な方法が、「HOW(どうやって)」が入っているかどうかで見分けることです。
❌ 「HOW」が入っている → 対策(施策)になっている
- 「課題:定期的な勉強会を開催する」→ 開催するのは「手段」
- 「課題:SNSを活用した情報発信を強化する」→ 活用するのは「手段」
- 「課題:1on1ミーティングを月2回実施する」→ 実施するのは「手段」
✅ 「WHAT(何を達成するか)」が入っている → 課題になっている
- 「課題:チームメンバーのスキル水準の底上げ」→ 何を達成するかが明確
- 「課題:ブランド認知度の向上」→ 達成すべき状態が明確
- 「課題:上司・部下間の信頼関係の構築」→ 目指す状態が明確
なぜ混同すると減点されるのか?採点者の視点から解説
「内容はあっているのに、なぜ減点されるの?」と思う方もいるかもしれません。採点者の視点で考えてみましょう。
採点者が見ているのは「論理の構造」
昇格試験の採点者は、あなたが書いた内容の正しさだけでなく、「管理職として問題を構造的に捉えられているか」を評価しています。
課題と対策を混同してしまうということは、採点者にこう見えています:
❌ 採点者の見え方(混同している場合)
- 「この人は問題の本質を捉えず、思いついた対策を書いているだけだ」
- 「課題設定ができていない。管理職として何を目指すのかが見えない」
- 「施策を羅列しているが、優先順位や根拠が示されていない」
一方、「課題→対策」を明確に書き分けられると:
✅ 採点者の見え方(書き分けできている場合)
- 「課題設定が適切で、達成すべき方向性が明確だ」
- 「課題に対して論理的に対策が紐づいている」
- 「管理職としての問題解決思考が身についている」
「課題≠対策」を理解していないと起きる3つの弊害
弊害①:同じことを二度書いてしまう
課題と対策が同じ内容になってしまい、書いている本人も「何が違うんだろう?」と迷ってしまいます。
弊害②:対策がバラバラになる
課題設定が曖昧だと、対策を考えるときに「あれもこれも」と羅列してしまいます。課題という「ゴール」があってはじめて、対策は一貫性を持ちます。
弊害③:論文全体の論理が崩れる
問題→課題→対策という流れが崩れると、読んでいる採点者は「なぜこの対策を取るのか」が理解できなくなります。どれだけ対策の内容が良くても、説得力が大幅に落ちます。
これが減点される!よくあるNG例と正しい書き方
実際の論文・ケーススタディでよく見かけるNG例と、どう書き直せばいいかを具体的に見ていきましょう。
NG例① 課題の欄に「〜を実施する」と書いてしまう
❌ NG例(営業部門の論文)
問題:新規顧客獲得数が目標比50%未達成である
課題:営業担当者のスキルアップ研修を月1回実施する
→「研修を実施する」は「どうやって」の話。これは対策(施策)です。
✅ OK例(書き直し後)
問題:新規顧客獲得数が目標比50%未達成である
課題:営業担当者の提案スキルの底上げ
対策:月1回の提案スキルアップ研修の実施、ロールプレイング演習の導入
→「提案スキルの底上げ」が達成すべき状態(課題)。研修はその手段(対策)。
NG例② 「〜を強化する」「〜を向上させる」を課題として書いてしまう
「強化する」「向上させる」という表現は、一見課題っぽく聞こえますが、実は対策に近い表現です。課題はあくまでも「達成すべき状態」を指します。
❌ よく見かけるNG表現
- 「課題:チームワークを強化する」
- 「課題:コミュニケーションを活性化させる」
- 「課題:業務効率を向上させる」
→ 「強化する」「活性化させる」「向上させる」は「どうするか」の表現に近く、対策と境界が曖昧になりやすい。
✅ 課題らしい表現に変えるコツ
- 「課題:チーム内の情報共有体制の整備」
- 「課題:部門横断的なコミュニケーション機会の創出」
- 「課題:業務プロセスの標準化による非効率の排除」
→ 「〜の整備」「〜の創出」「〜の排除」のように、達成すべき状態として名詞形で表現するとスッキリします。
NG例③ 問題をそのまま課題として書いてしまう
❌ NG例
問題:離職率が年15%で業界平均の3倍になっている
課題:離職率が高いことへの対応
→ 問題をなぞっているだけで、「何を達成すべきか」が見えていない。
✅ OK例(書き直し後)
問題:離職率が年15%で業界平均の3倍になっている
(原因分析:入社3年以内の若手の孤立感と成長実感の欠如)
課題:若手社員の定着を促進するオンボーディング体制の構築
対策:メンター制度の導入、入社6ヶ月以内の定期面談の義務化
→ 原因を踏まえた上で、「何を達成すべきか(課題)」を設定できている。
論文・ケーススタディで使える「問題→課題→対策」テンプレート
ここからは実践的なテンプレートを紹介します。このフォーマットに沿って書くだけで、論理の流れが自然と整います。
基本テンプレート(どんな課題でも使えます)
✅ 問題→課題→対策テンプレート
【問題】(現状とあるべき姿のギャップを数値・事実で示す)
「〇〇が△△の状態であり、目標に対して□□のギャップがある。」
【原因】(なぜそうなっているのかを分析する)
「その背景には、〜という構造的な原因がある。」
【課題】(原因を踏まえて達成すべき状態を設定する)
「したがって、私が取り組むべき課題は〜(名詞形で表現)である。」
【対策】(課題達成のための具体的な行動・手段を述べる)
「具体的には、①〜、②〜、③〜を実施する。」
論文(小論文)での活用例
論文では「私の課題と対策」として1つのまとまった段落で書くことが多いです。以下の例文を参考にしてください。
✅ 論文での活用例(製造部門・係長→課長昇格)
「現在、私の担当ラインでは不良品率が2.3%であり、会社目標の1.0%を大幅に上回っている(問題)。調査の結果、作業手順書が工程ごとに属人化しており、新人が正確な基準を習得できていないことが根本原因と判断した(原因)。したがって、私が優先的に取り組むべき課題は、製造工程における品質基準の標準化と水平展開である(課題)。具体的には、①工程ごとの作業手順書を映像マニュアルとして整備し、②ベテラン作業員によるOJTを週次で実施することで、6ヶ月以内に不良品率1.5%以下を達成する(対策)。」
ケーススタディでの活用例
ケーススタディでは問題→課題→対策が別々の設問として問われることが多いです。設問ごとに答えを対応させましょう。
✅ ケーススタディでの設問別の答え方
設問1「問題点を挙げよ」:現状の事実・数値から「何が起きているか」を書く
→ 「Aチームの売上目標達成率が60%に留まり、かつ3ヶ月連続で低下している。」
設問2「課題を述べよ」:達成すべき状態・目標テーマを書く
→ 「Aチームにおける個人別の提案スキル格差の是正と、チームとしての目標達成力の向上。」
設問3「対策を示せ」:具体的な行動・手段を書く
→ 「①週次の案件レビューでスキルギャップを可視化し、②ハイパフォーマーとのバディ制度を導入することで、四半期内に全員の達成率80%以上を目指す。」
書いたら必ず確認!自己チェックリスト
論文やケーススタディを書き終わったら、提出前に以下のチェックを行ってください。
✅ 課題・対策の書き分けチェックリスト
- ☑ 課題の文章に「〜する」「〜を実施する」という動詞が入っていないか
- ☑ 課題は「達成すべき状態・目標」として名詞形または体言止めで書かれているか
- ☑ 対策は課題に対して「HOW(どうやって)」として対応しているか
- ☑ 問題→原因→課題の論理的なつながりがあるか
- ☑ 課題が違えば対策も変わる構成になっているか(対策が課題に紐づいているか)
- ☑ 「課題を解決する」という誤った表現を使っていないか(正しくは「問題を解決するための課題」)
全項目チェックできれば、論理の流れとして合格水準です。1つでもチェックできない項目があれば、その部分を書き直してみましょう。
よくある質問
Q1. 「課題:〇〇力の強化」という書き方はOKですか?
A. 「〇〇力の強化」は対策寄りの表現なので、なるべく避けた方が無難です。「〇〇力の向上(=達成すべき状態)」とするよりも、「〇〇力のギャップの解消」や「〇〇体制の整備」のように何を整える・何を構築するのかを明示する名詞形の方が採点者に伝わりやすいです。
Q2. 課題は1つに絞るべきですか?複数あっても良いですか?
A. 文字数や設問の形式によります。論文では「最重要課題を1〜2つ絞り込む」ことで優先度判断力を示せます。ケーススタディで「課題を挙げよ」と問われた場合は、問題の数に対応させて複数挙げても構いません。ただし、課題が増えるほど対策との対応関係が崩れやすいので注意してください。
Q3. 「課題」と「施策」の違いは何ですか?「対策」と「施策」は同じですか?
A. 「対策」と「施策」はほぼ同じ意味として使われます。どちらも「課題を達成するための具体的な行動・手段」です。設問によって言葉が変わることがありますが(「対策を述べよ」「施策を示せ」など)、答え方の考え方は同じです。
Q4. 課題と対策の字数配分はどうすればいいですか?
A. 目安として、課題は簡潔に(50〜100字)、対策に字数を使う(200〜400字)ことをおすすめします。課題はテーマ設定なので端的に、対策は具体性が問われるのでしっかり書くバランスが評価されます。
まとめ:「課題」と「対策」の違いを押さえて、論理的な答案を書こう
この記事のポイントをまとめます。
✅ 課題と対策の違い(まとめ)
- 課題:達成すべき状態・目標テーマ(WHAT)→ 名詞形で表現
- 対策:課題達成のための具体的な行動・手段(HOW)→ 動詞形で表現
- チェック方法:「HOWが入っていたら対策」と覚えるだけでOK
- 論理の流れ:問題→原因→課題→対策の4ステップを守る
「課題と問題の違い」を理解した上で、さらに「課題と対策の違い」まで書き分けられると、あなたの答案は一気に論理的なレベルに引き上げられます。試験本番で迷ったときは、「この文章はWHAT(何を)を答えているか、HOW(どうやって)を答えているか」を自分に問いかけてみてください。
論文もケーススタディも、最終的に評価されるのは「思いついた対策の数」ではなく、「課題設定の的確さとその根拠」です。課題を正しく設定できれば、対策は自然と絞られてきます。
ぜひ今日から、過去に書いた答案を見直すところから始めてみてください。
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