「ケーススタディの施策が、どうしてもありきたりな正論になってしまう」「面接で他の受験者と差がつかない」——そんな悩みを抱えていませんか?
実は、その壁を突破する鍵がラテラルシンキング(水平思考)です。
ロジカルシンキングが「深く掘り下げる」思考法だとすれば、ラテラルシンキングは「横に広げる」思考法。この2つを掛け合わせることで、昇格試験でもビジネスの実務でも、他の人とは一段違う視点を示せるようになります。
この記事では、管理職・昇格試験の現場で10年以上受験者をサポートしてきた私が、ラテラルシンキングの基本から実践的な鍛え方、さらに昇格試験のケーススタディで使える例題まで徹底解説します。
ラテラルシンキング(水平思考)とは?30秒でわかる基本
まずは「ラテラルシンキングって何?」をサクッと理解しましょう。
エドワード・デ・ボノが提唱した「もう一つの思考法」
ラテラルシンキングとは、固定観念や前提条件にとらわれず、物事を多角的に考える思考法のことです。日本語では「水平思考」とも呼ばれます。
1967年にマルタ共和国の医師であり心理学者でもあるエドワード・デ・ボノ博士が提唱しました。デ・ボノ博士は、従来の論理的な思考法を「垂直思考」と呼び、それだけでは解決できない問題があることを指摘したのです。
✅ ラテラルシンキングの本質
ロジカルシンキング(垂直思考):筋道を立てて深く掘り下げ、1つの正解を導く
ラテラルシンキング(水平思考):前提を疑い、視点を変えて、複数のアイデアを生み出す
対立する概念ではなく、「掛け算」で使うことで威力が倍増する関係です。
有名な例を1つ紹介しますね。
問題:3人に13個のオレンジを公平に分けるには?
ロジカルに考えると「1人4個ずつ配り、残り1個を3等分する」となります。でも、ラテラルシンキングでは「13個をすべてジュースにして3等分する」という発想が出てきます。「オレンジの形を保たなければならない」という前提を外しただけで、まったく違う解が生まれるわけです。
なぜ今、管理職に水平思考が求められるのか
VUCA※の時代、過去の成功パターンがそのまま通用しなくなっています。管理職に求められるのは、「正解を素早く出す力」だけではありません。「正解がない状況で、新しい選択肢を生み出す力」が問われています。
※VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもので現代の変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が高いビジネス環境を指す言葉
たとえば、こんな場面です。
・部下が3人退職した → 「採用を急ぐ」だけがロジカルな答え。でもラテラルに考えると「業務自体を再設計して2人で回せる仕組みにする」という選択肢が生まれる
・売上が前年比80%に落ちた → 「営業を強化する」がロジカルな答え。ラテラルに考えると「クレーム情報を新商品のネタに変換する」という逆転の発想が出てくる
こうした発想ができる人材こそ、会社が管理職に昇格させたい人物像そのものです。
【図解】ロジカルシンキングとの違いを一発理解
ここでは、ビジネスで使われる3大思考法を比較しながら、ラテラルシンキングの立ち位置を明確にします。
垂直思考(ロジカル)vs 水平思考(ラテラル)
✅ ロジカル vs ラテラル 比較表
| 比較項目 | ロジカルシンキング | ラテラルシンキング |
|---|---|---|
| 別名 | 垂直思考 | 水平思考 |
| 方向性 | 深く掘り下げる | 横に広げる |
| 結論の数 | 基本的に1つ | 複数あり得る |
| 前提条件 | 前提に従って推論 | 前提そのものを疑う |
| 強み | 説得力・再現性 | 創造性・独自性 |
| 弱み | 発想の幅が狭くなりがち | 実現可能性の検証が必要 |
| 脳のタイプ | 左脳型 | 右脳型 |
デ・ボノ博士はこんな例え話をしています。
「バターにお湯をかけると溝ができ、どんどん深くなる。溝が深くなるほど、そこからジャンプするのは難しい」
これがまさにロジカルシンキングの落とし穴です。深く考えれば考えるほど、その枠組みの中から出られなくなる。ラテラルシンキングは、その溝から横に飛び出す力なのです。
クリティカルシンキングとの関係
もう1つよく比較されるのがクリティカルシンキング(批判的思考)です。
クリティカルシンキングは「本当にそうか?」と論理を検証する思考法。ラテラルシンキングは「別の方法はないか?」と発想を広げる思考法です。
つまり、クリティカルが「深さの精度」を高め、ラテラルが「広さ」を担うという補完関係にあります。
3つの思考法を「掛け算」で使いこなすのが最強
ここが最も重要なポイントです。3つの思考法はどれか1つを選ぶものではなく、掛け合わせるものです。
✅ ハイブリッド思考の3ステップ
Step 1:ラテラルシンキングで選択肢を広げる(発散)
Step 2:クリティカルシンキングで「本当にそうか?」と検証する(収束)
Step 3:ロジカルシンキングで筋道を立てて結論を整理する(構造化)
この3ステップを回せる人が、昇格試験で「この人は違う」と評価される人材です。
ロジカルシンキングの具体的な使い方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
管理職・昇格試験で差がつくラテラルシンキング活用法
ここからが本題です。ラテラルシンキングが昇格試験の合否を分ける場面を具体的に見ていきましょう。
ケーススタディの施策提案が「正論止まり」になる原因
昇格試験のケーススタディで最もよくある減点パターンがこれです。
❌ 正論止まりのNG回答例
問題:「営業部の売上が前年比15%減少している。課長としてどう対策するか」
NG回答:「営業担当者の訪問件数を増やす」「商品知識の研修を実施する」「週次のKPI管理を徹底する」
→ これらは間違いではないが、誰でも書ける答えです。採点者は何十枚も同じ答案を読んでいるので、まったく印象に残りません。
なぜこうなるかというと、「売上が下がった → 営業を頑張る」というロジカルな一直線の思考しか使っていないからです。ここでラテラルシンキングを使うとどうなるか。
✅ ラテラルシンキングを加えたOK回答例
・「売上減少の原因は営業力ではなく、顧客の購買行動の変化かもしれない」→ 顧客インタビューを実施し、ニーズの変化を施策に反映
・「訪問件数を増やす代わりに、既存顧客のクレームデータを新規提案のネタに変える」→ マイナス情報をプラスに転換
・「営業部だけで解決しようとせず、製造部門と共同で顧客向けセミナーを開催する」→ 部門横断の発想
→ 前提を疑い、視点を変えたことで、採点者が「おっ」と思う答案になります。
ケーススタディで「課題」と「問題」を正しく使い分けることも、差がつくポイントです。
面接で「視野の広さ」をアピールする回答のコツ
昇格面接では「この人に管理職を任せて大丈夫か」が問われます。面接官が見ているのは、1つの質問に対して複数の視点から考えられるかどうかです。
✅ 面接でラテラルシンキングを見せるテクニック
テクニック①:「一般的にはAですが、私はBという視点もあると考えます」
まず正論を示した上で、別の切り口を追加する。これだけで「視野が広い」印象になります。
テクニック②:「他部門の視点で見ると…」
自分の部署だけでなく、製造・品質管理・経理など他部門から見た景色を語れると評価が上がります。
テクニック③:「過去の事例を別の文脈で応用すると…」
異業種や別プロジェクトの成功事例を、今の課題に「読み替えて」提案する。これがラテラルシンキングの真骨頂です。
論文のテーマ解釈で差をつける水平思考
昇格論文でも同様です。たとえば「チームの生産性向上」というテーマが出た場合、ほとんどの受験者が「業務プロセスの改善」「ITツールの導入」を書きます。
ラテラルに考えると、「生産性が上がらない本当の原因は、メンバーが『何のためにやっているのか分からない』という目的の不明確さかもしれない」という切り口が生まれます。テーマの解釈自体を変えることで、答案全体の独自性が上がるのです。
このスキルは、実は昇格試験のケーススタディで直接問われる重要なポイントです。将来的に管理職を目指す方は、今のうちから意識しておくと有利です。
ケーススタディの全体像と解き方を詳しく知りたい方はこちら。
ラテラルシンキングを鍛える5つのトレーニング
「ラテラルシンキングが大事なのは分かったけど、どう鍛えればいいの?」という方に、今日から実践できる5つのトレーニング法を紹介します。
①前提を疑う「Why→What if」質問法
最もシンプルで強力なトレーニングです。
✅ やり方
Step 1:日常業務で「Why(なぜこうしているのか?)」を3回繰り返す
Step 2:出てきた前提に対して「What if(もし〇〇だったら?)」を投げかける
例:
「なぜ週次報告は月曜朝にやるのか?」→ 「慣例だから」
→ 「もし金曜夕方にやったら?」→ 週末に考える時間ができて、翌週の行動が早くなるかもしれない
これを毎日1つずつ繰り返すだけで、1ヶ月後には「前提を疑う」が習慣化されます。
②ランダムワード法
辞書やニュースサイトからランダムに1つの単語を選び、目の前の課題と無理やり結びつけてアイデアを出す方法です。
✅ やり方
課題:「部下の報告が遅い」
ランダムワード:「水族館」
連想:水族館 → 見える化 → ガラス越しに中が見える → 「業務の進捗が誰からでも見える仕組みを作ればいいのでは?」
→ 共有ダッシュボードの導入というアイデアが生まれる
一見バカバカしく感じるかもしれませんが、このトレーニングの本質は「意図的に思考の枠を壊す」ことにあります。デ・ボノ博士が最も推奨したトレーニングの1つです。
③逆転発想法(リバーサル)
課題を逆さまにして考える方法です。
✅ やり方
通常の課題:「顧客満足度を上げるには?」
逆転:「顧客満足度を最悪にするには何をすればいい?」
→ 「電話を3コール以上鳴らす」「メール返信を3日後にする」「クレームを無視する」
→ 逆転の答えをひっくり返すと、具体的な改善施策が出てくる
逆転発想法の良いところは、「当たり前すぎて気づけなかった改善ポイント」が見える化されることです。
④オズボーンのチェックリスト
アイデア発想の父と呼ばれるアレックス・オズボーンが考案した9つの切り口です。ラテラルシンキングの強力な補助ツールとして使えます。
✅ オズボーンのチェックリスト(9つの切り口)
①転用:他に使い道はないか?
②応用:似たものを真似できないか?
③変更:色・形・意味を変えたらどうなる?
④拡大:大きくしたら?増やしたら?
⑤縮小:小さくしたら?減らしたら?
⑥代用:他のもので代替できないか?
⑦再配置:順序やレイアウトを変えたら?
⑧逆転:反対にしたら?上下を入れ替えたら?
⑨結合:組み合わせたら?
ケーススタディの施策を考えるときに、この9つの切り口を当てはめるだけで発想の幅が一気に広がります。
⑤異業種事例の「読み替え」トレーニング
異業種の成功事例を自分の業界に「読み替える」練習です。
✅ やり方
事例:IKEAは家具を組み立て式にすることで、配送コストを大幅削減した
読み替え:「自社の〇〇業務で、完成品を渡す代わりに、相手に一部を担ってもらうことで効率化できないか?」
→ 例えば「報告書を全部自分で書く」のではなく「部下にテンプレートを渡して、自分は確認だけにする」など
このトレーニングを続けると、ニュースや書籍を読むたびに「これ、うちの職場にも使えるかも」と思考が自動的に働くようになります。
さらに多くのフレームワークを使いこなしたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
✅ 今日から始めるラテラルシンキング・チェックリスト
□ 1日1つ「なぜこうしている?」と前提を疑う
□ 週1回、ランダムワード法でアイデア出しを5分やる
□ ニュースや書籍を読んだら「自分の仕事に読み替えると?」と考える
□ 問題が起きたら「逆にするとどうなる?」を一度試す
□ ケーススタディの練習で、まず施策を5つ以上出してから絞り込む
例題で実践!ラテラルシンキング×昇格試験
ここからは、昇格試験のケーススタディを想定した例題で実践してみましょう。
例題1:売上低迷部門の立て直し施策
状況:あなたは営業第2課の課長です。担当エリアの売上が3四半期連続で目標未達成。メンバー5名の訪問件数は維持されているが、成約率が低下しています。
❌ ロジカルだけのNG回答
「成約率向上のため、商品知識研修を月2回実施する」「訪問件数を月50件から60件に引き上げる」「週次でKPIミーティングを行い進捗管理を徹底する」
→ 論理的には正しいが、「なぜ成約率が下がっているのか」の原因に切り込んでいない。表面的な対処療法に留まっている。
✅ ラテラルを加えたOK回答
前提を疑う:「訪問件数が維持されているのに成約率が落ちている → 顧客側の購買基準が変わったのでは?」
施策①:直近の失注案件10件を分析し、失注理由を顧客にヒアリング。購買基準の変化を把握する
施策②:技術部門と連携し、顧客向けの課題解決型セミナーを四半期1回開催。「売り込み」から「課題解決のパートナー」へポジション転換
施策③:成約している他課のベストプラクティスを分析し、自課に横展開。部門を超えたナレッジ共有の仕組みを構築
→ 「訪問を増やす」ではなく「訪問の質を変える」という視点の転換が評価されます。
ケーススタディで「問題点」と「原因」を混同しないことも重要です。
例題2:部下のモチベーション低下への対応
状況:あなたの課で中堅社員Aさん(入社8年目)の仕事への意欲が明らかに低下しています。遅刻や期限遅れが増え、チーム内の雰囲気にも影響が出始めています。
❌ ロジカルだけのNG回答
「1on1面談で現状を確認する」「目標を再設定する」「業務負荷の見直しを行う」
→ これも正しいのですが、「モチベーション低下=本人の問題」という前提に立っている点が弱い。
✅ ラテラルを加えたOK回答
前提を疑う:「本人のモチベーション低下ではなく、組織の仕組みが意欲を奪っているのでは?」
施策①:Aさんの強みが活かせる新規プロジェクトのリーダーを任命。「指導される側」から「導く側」への役割転換で当事者意識を回復
施策②:チーム全体の情報共有の仕組みを見直し。Aさんだけでなく全員が「何のためにやっているか」を常に把握できる環境を整備
施策③:他部署や社外との接点を増やす機会を設計。「閉じた世界」から「新しい刺激」を得られる動線を作る
→ 「個人の問題」を「組織の仕組みの問題」に読み替えたことで、管理職としての視座の高さが伝わります。
よくある質問(FAQ)
Q. ラテラルシンキングとロジカルシンキングの違いは?
ロジカルシンキング(垂直思考)は筋道を立てて1つの結論を導く思考法です。ラテラルシンキング(水平思考)は前提を疑い、多角的な視点から複数のアイデアを生み出す思考法です。対立するものではなく、掛け合わせることで問題解決力が飛躍的に向上します。
Q. ラテラルシンキングを鍛えるにはどうすればいい?
効果的なトレーニング法は5つあります。前提を疑う「Why→What if」質問法、ランダムワード法、逆転発想法、オズボーンのチェックリスト、異業種事例の読み替え。日常業務の中で「なぜこの手順なのか」と問い続けることが最も実践的です。
Q. 昇格試験でラテラルシンキングはどう役立つ?
ケーススタディの施策提案で「ありきたりな正論」を超えた独自の解決策を示せます。面接では「視野の広さ」として評価され、論文では他の受験者と差別化できるテーマ解釈が可能になります。
Q. ラテラルシンキングの具体例は?
IKEAが家具を組み立て式にして配送コストを削減した事例が有名です。昇格試験では、売上低迷部門の施策を「営業強化」だけでなく「顧客の不満を新商品開発の材料にする」といった視点の転換が差別化になります。
Q. ラテラルシンキングとクリティカルシンキングの違いは?
クリティカルシンキング(批判的思考)は「本当にそうか?」と論理を検証する思考法。ラテラルシンキングは「別の方法はないか?」と発想を広げる思考法です。クリティカルが「深さの精度」を、ラテラルが「広さ」を担い、補完関係にあります。
まとめ:ロジカル×ラテラルの「ハイブリッド思考」が合格の鍵
この記事のポイントを整理します。
✅ この記事のまとめ
・ラテラルシンキング(水平思考)は前提を疑い、視点を変えて、複数の解を生み出す思考法
・ロジカル(垂直)× ラテラル(水平)× クリティカル(検証)の3つを掛け合わせるのが最強
・昇格試験では「正論止まり」を突破して「この人は違う」と思わせる答案が書ける
・5つのトレーニングで、日常業務の中でラテラルシンキングは鍛えられる
・「発散(広げる)→ 収束(絞る)→ 構造化(整理する)」の3ステップを回す
ラテラルシンキングは、一朝一夕で身につくものではありません。でも、毎日の業務の中で「なぜ?」「もし〇〇だったら?」と問い続けるだけで、確実に思考の幅は広がっていきます。
そして、その思考の幅こそが、昇格試験で「管理職にふさわしい人材」と認められる決定的な要素です。今日から1つだけでも、トレーニングを始めてみてください。
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