「時間をかけて一生懸命書いたのに、なぜ落ちたんだろう…」
昇格試験の論文で不合格になった人の多くが、こんな疑問を抱えています。フィードバックをもらっても「論理性が弱い」「視点が浅い」といった抽象的な指摘だけで、「じゃあ、具体的にどこがダメだったの?」が見えてこない。
実は、これには理由があります。論文評価には「明文化されていない評価基準」が存在しそうですよね?
採点者の頭の中にはあるけど、受験者には伝えられていないポイント。それが、論文評価の「ブラックボックス」です。
でも安心してください。この記事では、人事部門や外部採点機関で実際に使われている評価の観点を、キャリアコンサルタントの視点から徹底解説します。これを読めば、「なるほど、ここを見られていたのか!」と腑に落ちるはずです。
それでは、論文評価のブラックボックスを一緒に開けていきましょう!
昇格試験の論文について基本から知りたい方は、昇格試験 論文の書き方完全ガイドで詳しく解説しています。
論文評価の「ブラックボックス」とは何か?

なぜ評価基準が不透明なのか
昇格試験の論文には、通常「評価項目」が公開されています。例えば:
- 論理的思考力
- 課題発見・解決力
- 文章表現力
- 管理職としての視点
しかし、これを見ただけでは「具体的に何を書けばいいか」までは分かりませんよね。 実は、採点者はこれらの大項目を、さらに細かい「チェックポイント」に分解して見ています。そして、この詳細なチェックポイントこそが、受験者には開示されない「ブラックボックス」の正体なのです。
外部機関による採点の実態
大企業や公的機関では、公平性を保つため、外部の専門機関に論文の採点を委託することがあります。
人材評価に関する詳細は、日本人材マネジメント協会でも解説されています。
こうした機関は、1本の論文を「なんとなく」読むわけではありません。例えば、ある大手評価機関では、100項目以上のチェックリストを使用し、3名の採点者が独立して評価した上で平均点を算出します。つまり、あなたの論文は極めて「体系的」かつ「機械的」に採点されているのです。
だからこそ、その「裏の評価基準」を知ることが、合格への最短ルートになります。
採点者が実際に見ている7つの隠れた評価ポイント

それでは、具体的にどんなポイントが評価されているのか、7つに分けて解説します。
① 最初の3行で「結論」が明確か
採点者が最も重視するのは冒頭です。最初の3行を読んだ時点で、「この人は何を主張したいのか」が分からなければ、その時点で評価は下がります。
近年、ビジネス環境は大きく変化しています。グローバル化やデジタル化が進み、企業には新たな対応が求められています。このような状況の中で… (解説:前置きが長すぎて、何が言いたいのか伝わりません)
部下育成において最も重要なのは、個々の強みを活かした育成計画の策定である。私は課長として、メンバー全員に個別育成面談を実施し、3年後のキャリアビジョンを共有することで、離職率を前年比30%削減した。 (解説:結論が明確で、具体的な実績も冒頭で提示できています)
【採点者の視点】
- 結論が第1段落(冒頭)にあるか
- 「〜すべきである」と断定的に書かれているか
- 抽象的な前置きで文字数を稼いでいないか

② 「課題」と「問題」を正しく区別できているか
これは9割の人が間違えるポイントです。採点者はこの言葉の使い分けを厳しく見ています。
- 「問題」 = 現状の困りごと(あるべき姿と現状のギャップ)
- 「課題」 = 問題を解決するためにやるべきこと(具体的な行動目標)
当部署の課題は、営業成績が低迷していることである。 (解説:これは「問題(困りごと)」であって「課題(やること)」ではありません)
当部署の問題は、営業成績が前年比15%減と低迷していることである。この原因は新規顧客へのアプローチ不足にある。したがって、私が取り組むべき課題は、新規開拓のための訪問数を週10件確保する体制を構築することである。 (解説:問題→原因→課題という論理展開ができています)
【採点者の視点】
- 「問題」と「課題」を混同していないか
- 課題が「〜を〜する」という行動目標になっているか
③ 「一つ上の立場」の視点で書けているか
係長から課長への昇格試験なのに、「いちプレイヤー」や「係長」の視点で書いてしまう人が驚くほど多いです。
(係長→課長試験) 私は係長として、担当するチームの業績向上に貢献します。 (解説:視点が現在の役職のままです)
私は課長として、3つの係(計15名)全体の業績を統括し、各係長に対して月次で進捗確認を行うことで、部全体の目標達成率を95%以上に引き上げます。 (解説:課長としての役割(複数チームの統括・係長の育成)が明確です)
【採点者の視点】
- 目標とする役職の主語(「私は課長として〜」)で書かれているか
- その役職に求められる範囲(より広く、より長期)の視点があるか
④ 具体性のレベルが十分か(5W2H)
「コミュニケーションを活性化する」「業務効率を改善する」といった耳触りの良い言葉だけでは評価されません。採点者は「5W2H」が揃っているかをチェックします。
- Who(誰が)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どうやって)
- How much(どのくらい)
コミュニケーションを改善するため、定期的に会議を開催する。 (解説:誰が?いつ?どんな会議? すべて不明です)
私は課長として、毎週月曜9時から30分間(When/How much)、全メンバー参加(Who)の進捗共有会議を開催する。各メンバーが前週の成果と今週の目標を発表し(What/How)、チーム全体の相互サポート体制を構築する(Why)。
【採点者の視点】
- 「誰が・いつ・何を」が具体的に書かれているか
- 数値目標や期限が含まれているか

⑤ 論理の「飛躍」がないか
「AだからB」というつながりが不自然だと、論理的思考力が低いとみなされます。
営業成績が低迷している。(問題)よって、社員研修を実施する。(対策) (解説:なぜ研修で解決するのか? 原因分析が抜けており飛躍しています)
営業成績が低迷している。その原因は、メンバーのヒアリングスキル不足により顧客ニーズを把握できていない点にある。したがって、ヒアリング力強化のためのロールプレイング研修を実施する。 (解説:問題→原因→対策の流れがスムーズです)
【採点者の視点】
- 原因分析なしに対策へ飛んでいないか
- 接続詞(したがって、なぜなら)が適切に使われているか

⑥ 「自分の経験・実績」が具体的に盛り込まれているか
教科書的な一般論はAIでも書けます。合格に必要なのは「あなた自身の実績」です。
部下育成には、定期的な面談が重要である。 (解説:誰でも言える一般論です)
私は係長として、月1回の1on1面談を実施してきた。その際、『3年後のキャリアビジョン』を必ず聞くようにしている。この取り組みにより、私のチームは**3年間離職率0%**を維持している。 (解説:具体的な行動と数値実績が説得力を生みます)
【採点者の視点】
- 自分自身の過去の取り組みが書かれているか
- 具体的な数値実績があるか
⑦ 文章の「読みやすさ」が確保されているか
内容が良くても、読みにくい文章はそれだけで減点対象です。
- 一文は40文字以内か(長すぎる文は切る)
- 「である調」で統一されているか(です・ます調の混在はNG)
- 誤字脱字がないか
当社の営業部門においては近年における市場環境の変化に伴う顧客ニーズの多様化が進展しており…(以下略) (解説:一文が長く、主語と述語が離れすぎています)
よくある不合格パターンと改善策
実際に不合格になりやすい典型的な4つのパターンを紹介します。ご自身の論文がこれに当てはまっていないか確認しましょう。

- 評論家型
- 特徴: 「〜すべきだ」という主張ばかりで、自分が何をするかが書かれていない。
- 改善策: すべての主張に「私は〜する」という主語をつける。
- 実況中継型
- 特徴: 現状の説明に終始し、解決策がほとんどない。
- 改善策: 現状分析は全体の30%以内に抑え、解決策に50%以上の分量を割く。
- 夢物語型
- 特徴: 予算や人員を無視した、実現不可能な壮大なプランを書く。
- 改善策: 自分の権限範囲内で「明日からできること」を書く。
- 自慢話型
- 特徴: 過去の実績紹介だけで終わっている。
- 改善策: 過去の実績はあくまで根拠。「その経験を活かして、次の役職で何をするか(未来)」を書く。
合格レベルの論文を書くための「自己評価チェックリスト」
論文を書き終えたら、以下の15項目でチェックしてみてください。12項目以上クリアできていれば、合格圏内です。

【構成・論理展開】
- [ ] 冒頭で結論を明確に述べている
- [ ] 「問題」と「課題」を正しく区別している
- [ ] 問題→原因→対策→効果という論理の流れがある
- [ ] 各段落の接続が自然で、論理の飛躍がない
【視点・立場】
- [ ] 目標とする役職の視点で書いている
- [ ] 「私は〜」という主語が明確にある
- [ ] マネジメント視点(部下への指示・育成)が含まれている
【具体性】
- [ ] 「誰が・いつ・何を」が具体的に書かれている
- [ ] 数値目標や期限が明記されている
- [ ] 自分の過去の実績・経験が盛り込まれている
【実行可能性・文章】
- [ ] 自分の権限範囲内でできることを書いている
- [ ] 予算や人員の制約を考慮している
- [ ] 1文が40文字以内で簡潔である
- [ ] 誤字脱字がなく、「である調」で統一されている
論文以外の試験科目については、昇格試験とは?5つの種類と合格のコツをご覧ください。

合格レベルの論文例(800字)
最後に、これまで解説したポイントを網羅した模範解答を見てみましょう。
テーマ:部下育成について、あなたの考えを述べよ
【模範解答】
私は課長として、部下一人ひとりの強みを活かした個別育成計画を実践することで、チーム全体の成長を加速させる。(結論)
現在、当部署では若手社員の離職率が年間18%と高く、育成の成果が定着していない。(問題)その原因は、画一的なOJTプログラムにより、個々の適性やキャリア志向を考慮できていないことにある。(原因分析)
したがって、私が取り組むべき課題は、メンバー全員との個別育成面談を月1回実施し、3年後のキャリアビジョンを一緒に描くことである。(課題)
具体的には、面談で「得意なこと」「やりたいこと」「会社から期待されること」の3つを整理し、各人に最適な育成プランを作成する。例えば、コミュニケーション力が高いAさんには顧客折衝の機会を増やし、データ分析が得意なBさんには業務改善プロジェクトのリーダーを任せる。また、育成の進捗を可視化するため、半期ごとに「スキルマップ」を更新し、成長を実感できる仕組みを構築する。(具体的施策)
これにより、メンバーのモチベーション向上と定着率の改善を図る。私は係長時代、この手法で担当チーム6名の離職率を3年間0%に抑えた実績がある。(実績・根拠)この経験を活かし、課長として15名全員の個別育成を徹底することで、部全体の離職率を3年以内に10%以下に削減し、組織の持続的成長に貢献する。(数値目標・決意)

まとめ:論文評価のブラックボックスを攻略しよう
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 論文評価の仕組みが、だいぶクリアになったのではないでしょうか?
論文評価のブラックボックスは、決して「理不尽な基準」ではありません。それは**「管理職として本当に必要な能力(論理構成力・課題解決力・具体性)」を測るための、非常に精緻な基準**なのです。
「なぜ落ちたのか分からない」状態から、「ここが足りなかったのか!」と気づくことができれば、合格はもう目前です。
論文は、正しい書き方を知って練習すれば必ず上達します。 ぜひ、この記事のチェックリストを使って、あなたの論文をブラッシュアップしてみてください。心から応援しています!
評価ポイントがわかっても、それを実際にどう書けば「A評価」になるのか。
その答え合わせができる「ケーススタディ」をご用意しました。
試験官が求めている「一つ上の視点」とは何か。きっと論文試験でも役立ちます。確認してみてください。

