「また固まってる…」
デスクで手が止まったまま、キーボードに指を置いたまま動かない新入社員。
声をかけると「わかりません」の一言。こんな光景、あなたの職場でも見かけませんか?
指示待ちで固まる新入社員の育成は、初めて部下を持ったリーダーにとって最大の試練です。「何回言えばわかるんだ」とイライラしたり、「自分で考えろ」と突き放したくなったり。
でも、それで主体性が育つなら誰も苦労しませんよね。
実は、新人が「動かない」のには明確な理由があります。そして、その理由を理解して適切にアプローチすれば、必ず変わります。
この記事では、キャリアコンサルタントの視点から、新入社員の主体性を引き出す具体的な実践テクニックを解説します。昇格試験の面接やケーススタディでも頻出の「部下育成」テーマ。ここで学んだスキルは、実務でも試験でも必ず役立ちます。
なぜ新入社員は「固まる」のか?5つの心理パターン

新人が動けない背景には、いくつかの心理パターンがあります。まずはそれを理解しましょう。
パターン①失敗への恐怖が強すぎる
今の若手世代は、失敗経験が極端に少ない傾向があります。学生時代は正解が明確で、間違えれば減点される環境。だから社会に出ても「失敗=悪」という思考が染み付いています。
見抜き方:
「これ、やってみて」と指示すると「間違えたらどうしよう」「失敗したら怒られる」という不安が先に立ち、手が止まる。確認の質問が異常に多い。
声かけ例:
「最初は誰でも失敗するから大丈夫。むしろ早く失敗して、早く学んでほしい。70点で報告してくれればOKだよ」
パターン②「正解」を求めすぎている
ビジネスには唯一の正解がないことが多いのに、新人は「完璧な答え」を出そうとして固まります。学校のテストと違って、100点満点の答えなんてないんですよね。
見抜き方:
「どう思う?」と聞くと「わかりません」と即答。自分の意見を言わず、「正しい答えを教えてください」という姿勢。
声かけ例:
「正解はないから、まずあなたの考えを聞かせて。AとBどっちが良さそう?」
パターン③優先順位がわからない
複数のタスクを抱えると、どれから手をつけていいかわからず、全部止まってしまう。
優先順位をつける判断軸を持っていないんです。
見抜き方:
「今何やってる?」と聞くと「えっと…」と答えに詰まる。あれもこれも中途半端で、何も完成していない。
声かけ例:
「迷ったときは、①締め切りが近い、②顧客影響が大きい、③上司が待ってる、この順で判断してみて」
パターン④質問していいタイミングがわからない
「忙しそうだから声かけづらい」「こんなこと聞いたら怒られるかも」と遠慮して、結局聞けずに固まる。特に上司が常に忙しそうにしていると、この傾向が強まります。
見抜き方:
困っているのに声をかけてこない。デスクで悩んでいる時間が長い。「なんで早く聞かないの?」と言いたくなる。
声かけ例:
「15分考えてわからなかったら、すぐ聞いて。忙しそうでも声かけていいよ。むしろ早く聞いてくれた方が助かる」
パターン⑤自分の判断に自信がない
経験が浅いから当然なんですが、自分で判断する自信がない。だから「これで合ってますか?」という確認ばかりになります。
見抜き方:
小さな判断でも全部確認してくる。「これで進めていいですか?」が口癖。
声かけ例:
「この件は君に任せるから、自分で判断して進めてみて。困ったら相談してね」
即効性あり!主体性を引き出す7つの実践テクニック

原因がわかったところで、具体的にどう対応すればいいのか。7つの実践テクニックを紹介します。
テクニック①「判断軸」を先に渡す
「自分で考えて」と丸投げするのは、地図を持たせずに登山させるようなもの。まずは判断の基準を明確に示しましょう。
×ダメな例:
「この資料、良い感じにまとめといて」
○良い例:
「この資料は役員向けだから、①結論を最初に、②データで裏付け、③A4で2枚以内、この3つを守ってまとめて」
実践のコツ:
判断基準は3つくらいに絞る。多すぎると逆に混乱します。また、「なぜその基準なのか」も一緒に伝えると、次から自分で考えられるようになります。
テクニック②クローズドクエスチョンから始める
いきなり「どう思う?」というオープンな質問は、新人には難易度が高すぎます。まずは選択肢を示して、選ばせることから始めましょう。
段階的アプローチ:
- 第1段階:「AとBどっちがいい?」(2択)
- 第2段階:「なぜそう思った?」(理由を聞く)
- 第3段階:「他に方法ある?」(視野を広げる)
- 第4段階:「君ならどうする?」(完全に任せる)
この段階を踏めば、自然と自分で考える力がついていきます。
テクニック③「70点で報告」ルールを徹底
完璧を求めすぎる新人には、「70点でいいから見せて」と明確に伝えましょう。これだけで、動き出すスピードが劇的に変わります。
具体的な伝え方:
「完成してから見せるんじゃなくて、7割くらいできた段階で一度見せて。そこで軌道修正した方が、結果的に早く終わるから」
なぜ効果的か:
- 完璧主義から解放される
- 早めに方向性の確認ができる
- 手戻りが減って、結果的に効率的
- 報告・相談のハードルが下がる
テクニック④失敗を「データ」として扱う
失敗したときの反応で、その後の主体性が大きく変わります。感情的に叱るのではなく、「良い実験結果だね」というスタンスで接しましょう。
×ダメな反応:
「なんでこうなったの?前も言ったよね?」
○良い反応:
「なるほど、このやり方だと○○になることがわかったね。じゃあ次はどうすればいいと思う?」
実践例:
あるチームでは、失敗を「学びシート」に記録する習慣を作りました。「失敗内容」「原因」「次のアクション」を書くだけ。これで失敗がネガティブではなく、成長の記録になりました。
テクニック⑤小さな成功体験を設計する
自信がない新人には、まず「できた!」という体験を積ませることが最優先。難易度を調整した課題を意図的に与えましょう。
成功体験の設計方法:
- スモールステップに分解:大きなタスクを小さく分ける
- 過去にできたことの延長線:全く新しいことより、少し難しい程度
- 成功を言語化:「これ、できるようになったね」と明確に伝える
- 次の挑戦を提示:「じゃあ次はこれやってみようか」
具体例:
いきなり「顧客に提案書を作って」ではなく、「まず過去の提案書を3つ見て、共通点を見つけて」→「その共通点を使って、構成案を作って」→「その構成で1ページ書いて」→「全体を完成させて」という段階を踏む。
テクニック⑥「なぜそう思った?」で思考プロセスを可視化
答えを教えるのではなく、考え方を育てるのがリーダーの仕事。「なぜ?」を丁寧に聞くことで、新人の思考が整理されます。
効果的な質問の流れ:
- 「どう思う?」(意見を引き出す)
- 「なぜそう思った?」(根拠を聞く)
- 「他の選択肢は考えた?」(視野を広げる)
- 「じゃあどっちがいいと思う?」(判断させる)
注意点:
「なぜ?」が詰問にならないよう、フラットな口調で。「なぜそう考えたの?教えて」というニュアンスが大事です。
テクニック⑦定期1on1で「安心感」を貯金する
主体性の土台は、心理的安全性です。週15分でいいので、業務以外の話もできる1on1の時間を作りましょう。
効果的な1on1の進め方:
- 最初の5分:雑談(最近どう?困ってることない?)
- 次の5分:業務の振り返り(今週やったこと、学んだこと)
- 最後の5分:来週の目標設定(挑戦したいこと)
1on1で絶対やってはいけないこと:
- 一方的に説教する
- 業務指示だけで終わる
- パソコン見ながら話す
- 途中で他の人の対応をする
「あなたのことをちゃんと見ているよ」というメッセージが、主体性を育てる最強の土壌になります。
【ケーススタディ】3ヶ月で変わった新人の実例

理論だけじゃ信じられない?では、実際に変わった新人の事例を紹介します。
Before:何を聞いても「わかりません」だった新人A
状況(配属1ヶ月目):
- 指示を出しても必ず固まる
- 「どう思う?」→「わかりません」
- 報告が遅く、ミスが発覚するのも遅れる
- 周りのメンバーも「あの子、大丈夫?」と心配
当時の私の悩み:
「何回説明すればいいんだ」「自分で考えてほしい」と思いながらも、どう育てていいかわからず、イライラと罪悪感が入り混じっていました。
実践した育成アプローチ(週単位で記録)
1週目:心理的安全性の構築
- 週1回15分の1on1開始
- 「失敗してもいいから、70点で報告して」と明言
- 小さなタスクを与え、完了したら「できたね」と言語化
2〜3週目:判断軸の提供
- 「これとこれ、どっちが良さそう?」と2択で質問
- 判断基準を3つ提示(締め切り・重要度・難易度)
- 「なぜそう思った?」を毎回聞く
4〜6週目:小さな成功体験の積み重ね
- できることを少しずつ増やす
- 「前はできなかったけど、できるようになったね」と成長を可視化
- 失敗しても「次どうする?」と未来志向で対話
7〜12週目:徐々に任せる範囲を拡大
- 「この件は君に任せる」と明確に委譲
- 困ったら相談、という安全網は残す
- 自分で考えた提案を採用し、実行させる
After:自分から提案してくるように
変化(配属4ヶ月目):
- 「こういうやり方もありますが、どうですか?」と提案してくる
- 自分で優先順位を判断して動ける
- 70点段階で報告が来るので、軌道修正がしやすい
- 小さな失敗をしても、自分で改善案を考えてくる
本人の言葉:
「最初は何をしていいかわからなくて、怖かったです。でも、失敗しても大丈夫だと思えるようになってから、自分で動けるようになりました」
管理職として学んだこと
新人が動かないのは、能力の問題じゃない。環境と接し方の問題だったんです。
3つの気づき:
- 「自分で考えろ」は思考停止ワード:判断軸を渡さずに丸投げしても育たない
- 小さな成功体験が自信を作る:できることを少しずつ増やす設計が必要
- 安心感が主体性の土台:心理的安全性なしに主体性は育たない
この経験は、その後の昇格試験の面接でも「部下育成の実績」として大いに役立ちました。
やってはいけないNG対応5選

良い対応がわかったところで、絶対にやってはいけないNG対応も知っておきましょう。これ、無意識にやってる人多いんです。
NG①「前も言ったよね」の繰り返し
新人は1回では覚えられません。「前も言った」と言われると、「自分はダメな人間だ」と自己否定して、ますます動けなくなります。
代わりにこう言う:
「ここ、何回も出てくるポイントだから、メモしておくといいよ」
NG②忙しいアピールで質問を封じる
「今忙しいから後で」「そんなこと自分で考えて」という対応を繰り返すと、新人は質問できなくなります。結果、問題が大きくなってから発覚します。
代わりにこう言う:
「今5分だけ時間ある。それ以上かかりそうなら、午後15時に30分取るから、それまでに整理しといて」
NG③完璧を求めすぎる
新人に100点を求めると、動けなくなります。最初は60点で十分。そこから育てればいいんです。
代わりにこう言う:
「最初は誰でもこんなもんだよ。これとこれを直せば、もっと良くなるよ」
NG④他の新人と比較する
「○○さんはもうできてるよ」という比較は、モチベーションを破壊します。人はそれぞれペースが違うんです。
代わりにこう言う:
「先月と比べて、明らかに成長してるね。この調子だよ」
NG⑤放置して「自分で育つ」を期待
「背中を見て学べ」は、もう通用しません。放置すると、新人は「期待されていない」と感じて、ますます受け身になります。
代わりにこう言う:
「この仕事、任せるね。週1回進捗確認するから、困ったらいつでも声かけて」
主体性が育つ職場環境の作り方
個人のスキルも大事ですが、チーム全体で新人を育てる環境を作ることも重要です。
心理的安全性の具体的な築き方
Googleの研究でも証明されているように、心理的安全性が高いチームほど、メンバーの主体性が高まります。
実践できる3つの施策:
- 失敗を責めない文化:ミーティングで「今週の失敗共有」をポジティブに行う
- 発言しやすい雰囲気:「他に意見ある人?」ではなく「○○さん、どう思う?」と個別に振る
- 上司も弱みを見せる:「これ、実は俺もわからないんだよね」と素直に言える関係
チーム全体で新人を育てる仕組み
リーダー一人で育てるのではなく、チーム全体で育てる仕組みを作りましょう。
効果的な仕組み:
- バディ制度:年齢の近い先輩を「相談相手」として指定
- 週次振り返り会:新人が「今週学んだこと」を発表する場
- 小さな成功の共有:「○○さん、これできるようになったよ」とチームで承認
上司自身が「わからない」を言える文化
リーダーが完璧を装うと、部下も完璧を装います。上司が「わからないから調べてくる」「これ、失敗したわ」と素直に言える職場は、新人も素直に動けます。
実践例:
ミーティングで「今週の失敗と学び」を全員が発表する時間を作る。リーダーが率先して失敗を共有すると、メンバーも安心して発言できるようになります。
まとめ+次のアクション
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。新人の主体性を引き出すテクニック、実践できそうですか?
この記事のポイントをおさらい:
✅ 新人が固まるのは能力不足ではなく、環境と接し方の問題
✅ 失敗への恐怖、完璧主義、判断軸の欠如が主な原因
✅ 判断軸を渡す、70点ルール、失敗をデータ化するのが効果的
✅ 小さな成功体験と心理的安全性が主体性を育てる
✅ 定期1on1で信頼関係を構築する
✅ 「前も言った」「完璧主義」「放置」はNG
✅ チーム全体で育てる仕組みを作る
明日からできる3つのアクション
- 判断軸を3つ決めて伝える:「迷ったらこの基準で判断して」と明確に
- 70点報告ルールを導入:「完成前に見せて」と言ってみる
- 週1回15分の1on1を予定に入れる:カレンダーに入れて確定させる
完璧にやろうとしなくて大丈夫。まず一つ、試してみてください。
部下育成力は昇格試験でも評価される
この記事で紹介したテクニックは、実務で使えるだけでなく、昇格試験でも必ず問われるスキルです。
頻出質問例:
- 「指示待ちの部下にどう対応しますか?」(面接)
- 「主体性のない新人をどう育てますか?」(面接)
- 「チームの若手メンバーが受け身で困っている」(ケーススタディ)
今日学んだ内容を実務で実践し、その経験を試験で語れば、説得力が段違いです。
部下育成は、リーダーとしての最重要スキル。そして、あなた自身の成長にもつながります。
一緒に、主体的に動けるチームを作っていきましょう!
【実践編】新入社員が勤務中にスマホでゲーム。チームの士気が下がっている。あなたならどうする?
この記事で学んだ「主体性を引き出すテクニック」、実際の問題にどう使うか試してみませんか?
昇格試験のケーススタディでも頻出の「問題行動をする部下への対応」。正解がない難しい状況だからこそ、あなたの思考プロセスが問われます。
問題設定:
あなたのチームの新入社員が、勤務中にスマホでゲームをしている。注意しても改善せず、他のメンバーから「あの人ばかり楽してる」と不満の声が出始めている。チーム全体の士気が下がっている。あなたならどう対応するか?
この問題、単に「注意する」だけでは解決しません。本人の主体性を引き出しつつ、チーム全体の信頼関係を回復する必要があります。
この記事で学んだテクニックを使って考えてみましょう:
- なぜスマホを見ているのか?(心理パターンの理解)
- どう声をかけるか?(対話のテクニック)
- どう主体性を引き出すか?(育成の視点)
- チームの士気をどう回復するか?(環境づくり)
→ 「新入社員が勤務中にスマホでゲーム。チームの士気が下がっている。」あなたならどうする?
実際のケーススタディ形式で、具体的な対応策と解答例を解説しています。昇格試験対策にも、実務にも使える実践的な内容です。ぜひ読んでみてください!

