「課長のときと同じアプローチでは、役員に響かない気がする…」
部長への昇格試験を控えて、こんな不安を感じていませんか?その直感は正しいです。部長は「経営幹部」であり、「経営チームの一員」として会社を動かす立場になります。
課長までは「部門をどう良くするか」でしたが、部長は「会社全体をどう成長させるか」という視座が求められます。ESも面接も、この視座の転換ができているかどうかで合否が決まります。
- 部長試験で企業が見ている3つの評価ポイント
- 課長との視座の違いを比較表で解説
- ES(エントリーシート)の書き方テンプレートと例文
- 面接でよく聞かれる質問15選と回答例
- 役員面接を突破するための5つの心構え
私はキャリアコンサルタントとして、また営業部長として役員面接の準備を経験してきました。この記事では、部長試験で評価される人の共通点と、具体的な対策をお伝えします。
昇格試験全体の概要については、昇格試験とは?5つの種類と合格のコツを完全解説も参考にしてください。
部長試験で企業が見ている3つのポイント
部長は「経営幹部」です。役員は「この人を経営チームに加えていいか」という視点で評価しています。
①全社視点での意思決定力
部長は、自部門だけでなく、会社全体の利益を考えて意思決定する立場になります。
時には「自部門にとってはマイナスでも、会社全体にとってはプラス」という判断を下す必要があります。この「全社最適」の視点を持っているかどうかが問われます。
②中長期的な事業戦略の構想力
課長は「今年度の目標達成」が中心でしたが、部長は3〜5年先を見据えた中長期戦略を語れる必要があります。
「5年後、この事業はどうなっているべきか?」「そのために今何をすべきか?」という戦略的思考が求められます。
③次世代リーダー(課長)の育成実績
部長は「課長を育てる」立場です。自分がいなくなっても組織が回る状態を作れるかが問われます。
課長との視座の違いを理解する
部長試験で最も重要なのが、この「視座の転換」です。
【比較表】課長と部長で求められる視点の違い
| 項目 | 課長 | 部長 |
|---|---|---|
| 視野の範囲 | 部門・他部署連携 | 全社・事業全体 |
| 成果の単位 | 部門P/L | 事業P/L・全社業績への貢献 |
| 育成対象 | 主任・係長 | 課長(次世代幹部) |
| 時間軸 | 1〜2年(年度目標) | 3〜5年(中期戦略) |
| 関わる経営課題 | 経営方針の部門展開 | 経営戦略の策定・実行 |
「部門最適」から「全社最適」への転換
課長時代は「自部門の成果を最大化する」ことが使命でしたが、部長は「自部門の利益を超えて、会社全体の利益を追求する」姿勢が求められます。
「私は部門の売上を最大化し、業界No.1を目指します。」
→ これは課長の視座。部長は「会社全体の成長にどう貢献するか」を語る必要があります。
ES(エントリーシート)の書き方【部長編】
部長ESで評価される5つの要素
- 全社視点の戦略構想:会社全体を見渡した課題認識と解決策
- 中長期ビジョン:3〜5年先を見据えた事業構想
- 事業単位の実績:P/Lを動かした具体的な成果
- 次世代幹部の育成:課長を育てた実績と方針
- 経営数字の理解:ROE・ROA等の財務指標への言及
【テンプレート】部長向けES記入例
私が部長を志望する理由は、経営チームの一員として、当社の持続的成長に貢献したいからです。
課長として5年間、部門の売上を150%成長させ、3名の課長候補を育成してきました。この経験を活かし、部長として①中期経営計画が掲げる「海外事業拡大」の戦略推進、②次世代経営幹部(課長)の計画的育成、③全社横断プロジェクトによるシナジー創出、の3点に注力したいと考えています。
ES頻出項目別の書き方と例文
①経営ビジョン・事業戦略の語り方
「当社の中期経営計画が掲げる『アジア市場シェア20%』の実現に向け、部長として2つの戦略を推進します。第一に、現地パートナーとの戦略的提携による販路拡大。第二に、現地ニーズに適応した製品開発体制の構築。3年後には、アジア事業の売上を現在の2倍にすることを目標とします。」
②複数部門を見渡した課題設定の書き方
【課題】営業・製造・開発の連携不足により、新製品の市場投入スピードが競合比1.5倍遅い
【原因分析】部門間の情報共有が不十分、意思決定プロセスが縦割り
【解決策】①部門横断プロジェクトチームの設置、②週次の部門長会議の実施、③共通KPIの設定
【目標】新製品開発リードタイムを30%短縮
③これまでの部門貢献実績(数字で示す)
- 事業売上:〇〇億円 → △△億円(150%成長)
- 営業利益率:〇〇% → △△%(5ポイント改善)
- 新規事業立ち上げ:年間売上10億円の事業を創出
- 人材育成:課長昇格者5名、うち2名は他部門へ輩出
経営数字の語り方については、管理職が知っておくべき財務・経営用語15選も参考にしてください。
部長面接でよく聞かれる質問15選と回答例
部長面接(役員面接)では、「経営戦略」「組織変革」「リスク管理」に関する質問が中心になります。
面接対策の詳細は昇格試験 面接対策完全ガイド|よく聞かれる質問50選と回答例も参考にしてください。
【経営戦略系】質問1〜5
Q1. 当社の強みと弱みは何だと思いますか?
「強みは、30年にわたる技術蓄積と顧客基盤の厚さです。弱みは、新規事業開発のスピードが競合に比べて遅いこと。この弱みを克服するため、部長として外部パートナーとのオープンイノベーションを推進し、新規事業の創出を加速させたいと考えています。」
Q2. 5年後、この事業はどうなっていると思いますか?
→ 業界動向を踏まえ、自社がどうポジショニングすべきかを語る。
Q3. 競合他社と比較して、当社はどう差別化すべきですか?
→ 自社の強みを活かした差別化戦略を具体的に語る。
Q4. 当社のROEについてどう思いますか?
・当社のROE水準(業界平均との比較)を把握しておく
・ROEを構成する要素(利益率、回転率、レバレッジ)を理解する
・「ROEを〇〇%に改善するために、自部門で〇〇に取り組みたい」と接続する
Q5. 中期経営計画の実現に向けて、部長として何をしますか?
→ 中計の重点テーマと、自部門での具体的アクションを接続して語る。
【組織変革系】質問6〜10
Q6. 組織を変革した経験を教えてください
「課長時代、部門の縦割り意識が強く、情報共有が滞っていました。そこで、週次の部門横断ミーティングを導入し、各チームの進捗と課題を可視化。結果、部門間連携が改善し、プロジェクトの納期遵守率が80%から95%に向上しました。」
Q7. 抵抗勢力がいた場合、どう対応しますか?
→ 「対話」と「小さな成功体験」で味方を増やす姿勢を示す。
Q8. 後継者(次の部長候補)をどう育てていますか?
→ 計画的な育成、権限委譲、挑戦機会の提供を具体的に語る。
Q9. 部門の人員削減を求められたらどう対応しますか?
→ 全社視点で判断しつつ、部下へのケアも忘れない姿勢を示す。
Q10. 異なる価値観を持つ部下をどうまとめますか?
→ 多様性を強みに変える視点、共通目標の設定を語る。
【リスク管理・意思決定系】質問11〜15
Q11. 会社にとって最大のリスクは何だと思いますか?
「2つのリスクを認識しています。短期的には、原材料価格の高騰による利益率の圧迫。中長期的には、デジタル化の遅れによる競争力の低下です。部長として、まずコスト構造の見直しを推進し、同時にDX投資の優先順位付けを提案したいと考えています。」
Q12. 経営層の意思決定に異論がある場合、どうしますか?
→ 意見を述べる場で建設的に提案し、決まったら従う姿勢。
Q13. 不祥事が発覚したとき、どう対応しますか?
→ 即座な報告・対応、再発防止、ステークホルダーへの説明責任を語る。
Q14. 撤退の判断をどう下しますか?
→ 感情論ではなく、数字に基づいた判断基準を示す。
Q15. 最後に何か伝えたいことはありますか?
→ 「経営チームの一員としての覚悟」を示す決意表明を。詳しくは昇格面接「最後に一言」で逆転合格!をご覧ください。
役員面接を突破するための5つの心構え
部長試験の面接官は役員です。課長面接とは異なる視点で評価されることを理解しましょう。
①経営者と同じ言葉で語る
役員は、「経営者と同じ言葉で話せるか」を見ています。ROE、ROA、P/L、キャッシュフロー…こうした経営用語を自然に使えるようにしておきましょう。
②自部門を超えた視野を示す
全社視点、事業横断視点を常に示しましょう。「自部門のことしか考えていない」と思われたら不合格です。
③批判ではなく建設的提案をする
会社の課題を指摘するとき、批判で終わらず、必ず解決策をセットで提示しましょう。
④短期と中長期のバランスを語る
「今年度は〇〇を達成しつつ、3年後に向けて△△の種を蒔きます」というように、短期と中長期のバランスを示しましょう。
⑤「後継者育成」への言及を忘れない
「自分がいなくなっても組織が回る状態」を作れるかどうかが問われます。後継者育成について必ず言及しましょう。
- □ 経営用語(ROE、P/L等)を自然に使えるか?
- □ 自部門を超えた全社視点で語れるか?
- □ 課題指摘と解決策をセットで提示できるか?
- □ 短期目標と中長期ビジョンを両方語れるか?
- □ 後継者育成について具体的に語れるか?
よくある失敗パターンとNG例
NG①「課長の延長」で語ってしまう
「部長になっても、これまで同様、部門の数字達成に全力を尽くします。」
「部長として、自部門の成果を追求しつつ、全社横断プロジェクトを主導し、会社全体の成長に貢献します。」
NG②経営数字を語れない
「ROEについては詳しくないので…」
→ 経営幹部候補が経営数字を語れないのは致命的です。事前に勉強しておきましょう。
NG③次の部長候補を育てていない
「後継者はまだ具体的には考えていません。」
→ 後継者育成は部長の重要な責務。「これから」では遅いと評価されます。
面接で落ちる人の共通点は、昇格面接で落ちる人の5つの共通点で詳しく解説しています。
まとめ:部長試験は「経営チームの一員」としての覚悟で臨む
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
部長試験で最も大切なのは、「経営チームの一員として、会社全体の成長に責任を持つ覚悟」を示すことです。
- 部長は「経営幹部」として全社視点での意思決定力が求められる
- 課長との違いは「部門最適」→「全社最適」への転換
- ESでは中長期戦略と自己ビジョンの接続を意識する
- 経営数字(ROE、P/L等)を自然に語れるようにする
- 後継者育成について具体的な計画を示す
まずは、自社の中期経営計画と財務諸表を読み直し、「自分が経営者だったらどうするか」を考えることから始めてみてください。
主任・係長試験を控えている方は、【主任・係長編】ES・面接対策をご覧ください。
課長試験を控えている方は、【課長・課長補佐編】ES・面接対策をご覧ください。
試験直前の最終確認には、【直前対策】試験前夜にこれだけは確認!「管理職視点」への切り替えスイッチもお役立てください。
