はじめに:「落ちた」その瞬間、頭が真っ白になった
「不合格です」
その一言を聞いた瞬間、何も考えられなくなった。準備してきた数ヶ月が、全て無駄になった気がした。同期は合格して、自分だけ取り残された。上司にどう報告すればいいのか、家族にどう説明すればいいのか。
もしあなたが今、そんな気持ちでこの記事を読んでいるなら、まず伝えたいことがあります。
あなたは決して一人じゃない。
実は、昇格試験に一度で合格する人の方が少ないんです。多くの企業で、初回合格率は30〜50%程度。つまり、半数以上の人が一度は不合格を経験しているということ。
そして、もっと大事なこと。
一度落ちた人の方が、次は強い。
この記事では、昇格試験に落ちた後、何をすべきかを具体的に解説します。感情の整理から、次回合格のための戦略まで、実践的な5つのステップをお伝えします。
「落ちた」は終わりじゃない。ここからが本当のスタートです。一緒に、次の合格に向けて歩き出しましょう。
まず知っておいてほしいこと:昇格試験に落ちる人は多い
データで見る昇格試験の合格率

落ち込んでいるあなたに、まず知ってほしいデータがあります。
主要企業の昇格試験合格率(平均値)
- 初回合格率:30〜50%
- 2回目挑戦での合格率:60〜70%
- 3回目以降の合格率:80%以上
つまり、最初から合格する方が珍しいんです。
大手企業A社の人事担当者は、こう語っています。
「昇格試験は、一度の挑戦で合格させることを目的としていません。むしろ、不合格になった人がどう立ち直り、成長するかを見ています。二度目の挑戦で合格した人の方が、その後の管理職としてのパフォーマンスが高い傾向すらあります」
企業の人材育成に関する調査については、厚生労働省の「能力開発基本調査」も参考になります。
落ちた理由は「能力不足」だけじゃない
昇格試験に落ちる理由は、必ずしも「能力が足りない」からではありません。
よくある不合格の理由:
- 準備不足・対策不足(最も多い)
- 緊張で本来の力が出せなかった
- 出題傾向の読み違い
- 時間配分のミス
- 面接での表現力不足
- 論文の論理展開の弱さ
- 会社が求める人物像の理解不足
つまり、「あなたがダメ」なんじゃなくて、「準備や戦略がズレていた」だけのケースが大半なんです。
これは、次は改善できるということ。
【重要】落ちた直後の72時間の過ごし方

最初の24時間:感情を受け入れる
不合格を知った直後は、誰だって落ち込みます。それは当然のこと。無理にポジティブになろうとしなくていいです。
この24時間でやっていいこと:
- 悔しい気持ちを素直に感じる
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
- 好きなものを食べる、好きなことをする
- いつもより早く寝る
やってはいけないこと:
- 自分を責め続ける
- SNSで合格報告を見続ける
- やけ酒や暴飲暴食
- 衝動的に転職サイトに登録する
大事なのは、感情を否定しないこと。落ち込む自分を「ダメだ」と責めると、さらに落ち込む悪循環に入ります。
24〜48時間:事実を整理する
少し落ち着いてきたら、冷静に事実を整理しましょう。
紙に書き出してみる:
- どの試験科目で点数が低かったか
- 何ができなかったのか(具体的に)
- どんな準備をしてきたか
- 何が足りなかったと思うか
この段階では、まだ「次どうするか」を考える必要はありません。まずは、客観的に事実を把握するだけでOK。
48〜72時間:前を向く決意をする
72時間経つと、人間の脳は徐々に冷静さを取り戻します。このタイミングで、一つだけ決めてください。
「次、どうするか」
選択肢は3つ:
- 再挑戦する
- 今は挑戦しない(時期を見計らう)
- 管理職以外のキャリアを選ぶ
どれを選んでも正解です。大事なのは、自分で決めること。
もし「再挑戦する」と決めたなら、この記事の続きを読んでください。次の合格に向けて、具体的に何をすべきかをお伝えします。
やるべきこと①:フィードバックを徹底的に分析する

人事部・上司からのフィードバックを必ず受け取る
多くの企業では、不合格者に対してフィードバックの機会を設けています。絶対に受けてください。
聞くべき質問リスト:
- どの科目・項目で点数が低かったか
- 具体的にどこが評価されなかったか
- 次回に向けて改善すべき点は何か
- 合格者との差は何だったか
- 推奨される準備方法はあるか
恥ずかしい、辛いと思うかもしれません。でも、このフィードバックこそが、次回合格への最短ルートなんです。
フィードバックを受けるときの心構え
良い姿勢:
- 素直に聞く(言い訳しない)
- メモを取る
- わからないことは質問する
- 感謝の気持ちを伝える
NG姿勢:
- 「でも」「だって」と反論する
- 不満な態度を見せる
- 聞き流す
- その場で感情的になる
人事や上司は、あなたを責めているわけじゃありません。次の成長を願ってフィードバックしてくれています。
フィードバックシートを作成する
受け取ったフィードバックを、整理してシートにまとめましょう。
項目例:
| 評価項目 | 点数/評価 | 指摘内容 | 改善策 |
|---|---|---|---|
| 論文 | C | 論理展開が弱い | 構成を事前に作る練習 |
| 面接 | B | 具体例が少ない | STAR法で準備 |
| 筆記 | B | 時間配分ミス | 過去問で時間を測る |
可視化することで、何をすべきかが明確になります。
やるべきこと②:不足していたスキルを特定して補強する
「なぜ落ちたか」を深掘りする
フィードバックをもとに、もう一歩踏み込んで分析しましょう。
例:論文で評価が低かった場合
- 表面的な理由:「論理展開が弱い」
- 深掘り:なぜ論理展開が弱かったのか?
- 構成を考えずに書き始めた
- 結論を最初に書かなかった
- 具体例が不足していた
- 時間が足りず最後まで書けなかった
例:面接で評価が低かった場合
- 表面的な理由:「リーダーシップが伝わらなかった」
- 深掘り:なぜ伝わらなかったのか?
- 具体的なエピソードを用意していなかった
- 緊張して話が支離滅裂になった
- 抽象的な回答ばかりだった
- 自分の成果ばかりアピールして、チーム視点がなかった
「なぜ?」を3回繰り返すと、本質的な課題が見えてきます。
スキル別の補強方法
【論文が弱かった人】
具体的な対策:
- 論文の書き方の本を1冊読む
- 構成テンプレート(序論・本論・結論)を暗記する
- 過去問を最低3本書く
- 先輩や上司に添削してもらう
- 時間を測って書く練習をする
おすすめ教材:
当サイトの記事も参考にしてください:
昇格試験 論文の書き方完全ガイド|頻出テーマ10選と合格する構成テンプレート
【面接が弱かった人】
具体的な対策:
- STAR法(状況・課題・行動・結果)でエピソードを準備
- 想定問答を50個作る
- 家族や同僚に模擬面接をしてもらう
- 鏡の前で話す練習をする
- 録音して、自分の話し方をチェックする
おすすめ記事:
昇格試験 面接対策完全ガイド|よく聞かれる質問50選と回答例
【筆記試験が弱かった人】
具体的な対策:
- 過去問を最低5年分解く
- 時事問題は日経新聞を毎日読む
- 業界知識の本を3冊読む
- 時間配分を厳守する練習をする
【インバスケットが弱かった人】
具体的な対策:
- インバスケットの問題集を解く
- 優先順位のつけ方を学ぶ
- 「誰が・いつ・何を」を必ず書く練習
- 全体を把握してから回答する習慣をつける
おすすめ記事:
インバスケットとは?昇格試験で落ちないための例題付き完全ガイド
やるべきこと③:次回に向けた具体的な行動計画を立てる

「いつ」再挑戦するかを決める
多くの企業では、次回の昇格試験まで1年あります。この1年をどう使うかで、結果は大きく変わります。
推奨スケジュール(試験まで12ヶ月の場合)
1〜3ヶ月目:基礎固め期
- フィードバックの整理
- 弱点分野の基礎学習
- 関連書籍を読む(月2冊)
- 業務で実践できることを試す
4〜6ヶ月目:実践期
- 過去問を解き始める
- 論文を書く練習(月1本)
- 想定問答を作る
- 上司にフィードバックをもらう
7〜9ヶ月目:強化期
- 苦手分野を集中的に対策
- 模擬面接を受ける(月2回)
- 論文を週1本書く
- 過去問の総復習
10〜12ヶ月目:仕上げ期
- 本番形式で模擬試験
- 最終チェック
- 体調管理
- メンタルの整え
「週単位」の行動計画に落とし込む
大きな計画だけでは、実行できません。週ごとにやることを決めることが大事。
例:基礎固め期(1ヶ月目)の週次計画
- 第1週:フィードバックシート作成、論文の本を読む
- 第2週:過去問を1年分解く、業界ニュースをチェック
- 第3週:論文を1本書く、上司に相談
- 第4週:振り返りと次月の計画
スマホのカレンダーやタスク管理アプリに入れて、毎週確認する習慣をつけましょう。
「何を勉強するか」より「どう実務で活かすか」
試験勉強だけでは、本質的な成長はありません。学んだことを実務で実践することが最も重要。
実践例:
- 論文で「部下育成」を学んだ → 実際に後輩の1on1を始める
- 面接で「リーダーシップ」が課題 → 小さなプロジェクトのリーダーを志願
- 筆記で「経営知識」が弱い → 部署の予算管理に関心を持つ
実務で使えるスキルが身につけば、次回の試験は自然と合格レベルに達します。
やるべきこと④:メンターや上司と今後のキャリアを相談する
一人で抱え込まない
昇格試験に落ちた後、「恥ずかしい」「迷惑をかけた」と思って、一人で抱え込む人がいます。でも、それは逆効果。
上司や先輩に相談すべき理由:
- 客観的なアドバイスがもらえる
- 自分では気づかない弱点を指摘してもらえる
- モチベーションを保ちやすい
- 会社が求める人物像を教えてもらえる
実は、相談する姿勢そのものが評価されることもあります。「素直に学ぼうとしている」「成長意欲がある」と見られるんです。
相談するときの3つのポイント
ポイント①:具体的に聞く
NG:「次、どうすればいいですか?」
OK:「論文の論理展開が弱いと言われたのですが、どう改善すればいいでしょうか?」
ポイント②:アドバイスを素直に受け取る
相手の意見が自分の考えと違っても、まずは「ありがとうございます」と受け止める。反論や言い訳は後で考えればいい。
ポイント③:定期的に報告する
一度相談して終わりじゃなく、進捗を報告する。「先日のアドバイス通り、論文を3本書きました。次は面接対策に移ります」など。
社内にメンターがいない場合
社内に相談できる人がいない、または相談しづらい場合は、外部のサービスを活用するのも手です。私もキャリアコンサルタント資格を持っていますので社外の人の相談にのることも多いです。
活用できるサービス:
- キャリアコンサルタントの個別相談
- 昇格試験対策のコーチング
- ビジネススクールのキャリアカウンセリング
ただし、費用がかかるので、まずは社内で相談できる人を探すことを優先してください。
キャリアコンサルティングについては、厚生労働省のキャリア形成サポートセンターでも無料相談が受けられます。
やるべきこと⑤:メンタルとモチベーションを管理する

長期戦を戦うためのメンタル管理
次回の試験まで1年。その間、モチベーションを保ち続けるのは簡単じゃありません。
モチベーションが下がる瞬間:
- 同期の昇進を見たとき
- 仕事が忙しくて勉強時間が取れないとき
- 勉強しても成果が見えないとき
- 家族から「また落ちたら?」と言われたとき
こうした瞬間は、必ず来ます。だからこそ、事前に対策を立てておくことが大事。
モチベーション維持の5つのコツ
コツ①:小さな目標を設定する
「1年後に合格」という大きな目標だけだと、途中で挫折します。
小さな目標の例:
- 今月中に論文を3本書く
- 今週中に過去問を1年分解く
- 今日は30分勉強する
小さな達成感の積み重ねが、モチベーションを保ちます。
コツ②:勉強仲間を作る
一人で頑張るより、仲間がいた方が続きます。
- 同じく再挑戦する同僚と勉強会を開く
- SNSで同じ境遇の人と繋がる
- オンラインコミュニティに参加する
「自分だけじゃない」と思えるだけで、心が軽くなります。
コツ③:自分を責めすぎない
「落ちた自分はダメだ」と思い続けると、エネルギーが枯渇します。
自分に優しくする方法:
- 「一度落ちたくらいで人生は終わらない」と言い聞かせる
- 自分の頑張りを認める
- たまには勉強をサボる日があってもいい
完璧主義は、長期戦では足を引っ張ります。
コツ④:ご褒美を設定する
勉強を続けるモチベーションとして、ご褒美は効果的。
例:
- 今月の目標達成したら、好きなレストランで食事
- 論文10本書いたら、欲しかった本を買う
- 模擬面接をクリアしたら、週末に小旅行
頑張った自分に、ちゃんとご褒美をあげましょう。
コツ⑤:定期的に振り返る
月に1回、自分の成長を振り返る時間を作りましょう。
振り返りシート:
- 今月できたこと
- 今月できなかったこと
- 来月の目標
- 自分へのメッセージ
「成長している実感」が、モチベーションを支えます。
やってはいけない3つのNG行動

NG行動①:すぐに転職活動を始める
落ちた直後、「この会社ではもうダメだ」と思って転職サイトに登録する人がいます。でも、ちょっと待ってください。
転職を考えるべきタイミングじゃない理由:
- 感情的な判断になりやすい
- 今の会社の良さが見えなくなっている
- 転職先でも同じ壁にぶつかる可能性がある
もちろん、「会社の評価制度が不公平」「パワハラがある」など、明確な理由があるなら転職を検討すべきです。でも、「試験に落ちたから」だけで決めるのは早すぎます。
NG行動②:自暴自棄になる
「もう頑張っても無駄だ」と投げやりになり、仕事も適当になる。これは最悪のパターン。
自暴自棄がもたらす悪循環:
- 仕事のパフォーマンスが下がる
- 上司からの評価が下がる
- 次回の試験でも不利になる
- さらに自信を失う
一度落ちたからといって、あなたの価値が下がったわけじゃありません。むしろ、ここから挽回できるかが本当の評価ポイントです。
NG行動③:同じ準備を繰り返す
「もっと頑張れば次は受かる」と思って、前回と同じ勉強法を繰り返す。これも危険。
なぜNG?
- 同じ方法では、同じ結果になる可能性が高い
- 弱点が改善されない
- 時間の無駄になる
大事なのは、やり方を変えること。フィードバックをもとに、戦略を見直しましょう。
【実例】再挑戦で合格した人の体験談3選

体験談①:論文を徹底的に鍛えて合格(Aさん・35歳・製造業)
1回目:不合格(論文C評価)
「論理展開が弱い」「具体性に欠ける」とフィードバックを受けました。正直、どう改善すればいいかわからず、途方に暮れました。
再挑戦の準備(1年間)
- 論文の書き方の本を3冊読む
- 構成テンプレートを作り、毎回同じ型で書く
- 過去問を20本書き、上司に添削してもらう
- ビジネス書を月2冊読み、具体例のストックを増やす
2回目:合格(論文A評価)
論文が劇的に改善し、面接でも「論理的思考力が向上した」と評価されました。諦めずに続けて本当によかったです。
Aさんのアドバイス:
「一度落ちたことで、自分の弱点が明確になりました。それを徹底的に潰せば、次は必ず受かります」
体験談②:面接対策を強化して合格(Bさん・42歳・IT業界)
1回目:不合格(面接B評価)
筆記は通過したのに、面接で落ちました。「具体的なエピソードが少ない」「管理職としての視点が弱い」と指摘されました。
再挑戦の準備(1年間)
- STAR法で過去の経験を30個整理
- 想定問答を100個作成
- 同僚に模擬面接を月2回してもらう
- 管理職向けの本を読み、視点を変える訓練
2回目:合格(面接A評価)
今度は自信を持って面接に臨めました。具体例が豊富で、説得力があったと評価されました。
Bさんのアドバイス:
「面接は準備が全てです。一度落ちて、準備の重要性に気づけたことが、逆に良かったと思います」
体験談③:メンタルを立て直して合格(Cさん・38歳・金融業界)
1回目:不合格(総合C評価)
全科目で平均点以下。「何もかもダメだ」と落ち込み、3ヶ月間何も手につきませんでした。
立ち直りのきっかけ
上司に呼ばれ、「お前は能力があるのに、準備不足なだけだ。次は俺が全力でサポートする」と言われました。その言葉で、もう一度やってみようと思えました。
再挑戦の準備(1年間)
- 上司と月1回の面談でフィードバック
- 基礎から徹底的にやり直す
- 勉強会に参加してモチベーション維持
- 毎日30分だけでも継続する
2回目:合格(総合B評価)
完璧ではなかったけど、前回より明らかに成長できました。一人じゃなく、周りのサポートがあったから乗り越えられました。
Cさんのアドバイス:
「一人で抱え込まないでください。周りに助けを求めることは、恥ずかしいことじゃありません」
まとめ:「落ちた」は成長のチャンス

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。少しは気持ちが前向きになりましたか?
この記事のポイントをおさらい:
✅ 昇格試験の初回合格率は30〜50%。落ちる人の方が多い
✅ 落ちた直後72時間は、感情を受け入れて冷静になる時間
✅ フィードバックを徹底的に分析することが次回合格の鍵
✅ 不足スキルを特定し、具体的な補強策を実行する
✅ 1年間の行動計画を立て、週単位で実行する
✅ メンターや上司に相談し、一人で抱え込まない
✅ モチベーション管理が長期戦を制す
✅ 転職や自暴自棄など、NG行動を避ける
✅ 再挑戦で合格した人は、弱点を克服した人
「落ちた」という事実は変えられません。でも、「そこからどう立ち上がるか」は、あなた次第です。
一度落ちた人の方が、次は強い。なぜなら、自分の弱点を知っているから。そして、その弱点を克服する努力ができるから。
完璧な人間なんていません。大事なのは、失敗から学び、成長し続けること。
次の試験で、あなたが笑顔で「合格しました」と報告できることを、心から願っています。
一緒に頑張りましょう!

