「部下からの報告がまとまっていない」「会議で話が発散する」「上司への説明がうまくいかない」——。
管理職になると、こういった「情報が整理されていない」ストレスが急増します。
実は、これらの悩みを解決する「思考の武器」があります。それがロジックツリーです。
ロジックツリーを使いこなせるようになると、複雑な問題が一瞬で整理でき、部下への指示も明確になり、上司への報告もスムーズになります。
この記事でわかること
- ロジックツリーの3種類(Why/What/How)の使い分け
- 「漏れなくダブりなく」を実現するMECEの原則
- 管理職の実務で使える具体例3パターン
- 失敗しがちな5つのポイントと対策
- 今日から使える5ステップの作成手順
私自身、課長時代に「なぜこの問題が起きたのか」を部下に説明するのに苦労した経験があります。でもロジックツリーを使い始めてから、チーム全員が「問題の構造」を共有できるようになりました。
この記事を読めば、あなたも「問題を整理する力」が身につきます。それでは始めましょう。
ロジックツリーとは?管理職に必須の思考ツール
定義:複雑な問題を構造化する「木」
ロジックツリーとは、ある問いに対して、論理的に分解・整理していく樹形図のことです。
「ツリー(木)」という名前の通り、幹から枝が分かれるように、大きなテーマを細かく分解していきます。
【ロジックツリーの基本構造】
テーマ(問い)
├─ 要素A
│ ├─ 詳細A-1
│ └─ 詳細A-2
├─ 要素B
│ ├─ 詳細B-1
│ └─ 詳細B-2
└─ 要素C
コンサルティング会社では「イシューツリー」「ロジカルツリー」とも呼ばれ、問題解決の基本フレームワークとして世界中で使われています。
なぜ管理職にロジックツリーが必要なのか
管理職になると、プレイヤー時代とは求められる思考が変わります。
これらすべてに共通するのが、「複雑な情報を構造化する力」です。
ロジックツリーは、この力を誰でも身につけられる「型」なんです。
ロジックツリーを使えると何が変わる?
実際に私が経験した変化をお伝えします。
Before:「売上が落ちている。何とかしないと」で終わる
After:「売上低下の原因は3つ。うち最も影響が大きいのは○○。優先的に△△に取り組む」と言語化できる
この違いは、上司への報告、部下への指示、会議での発言、すべてに影響します。
3種類のロジックツリーを使い分ける【実践ガイド】
ロジックツリーには、目的に応じて3つの種類があります。これを使い分けられるかどうかで、問題解決の精度が大きく変わります。
①Whyツリー:原因を深掘りする
「なぜ?」を繰り返して、問題の根本原因を探るときに使います。
【Whyツリーの例:残業が多い】
なぜ残業が多い?
├─ 業務量が多すぎる
│ ├─ 人員が不足している
│ └─ 無駄な業務がある
├─ 効率が悪い
│ ├─ ツールが古い
│ └─ スキル不足
└─ 残業文化がある
└─ 上司が帰らない
トヨタの「なぜなぜ分析」もWhyツリーの一種です。「なぜ?」を5回繰り返すことで、表面的な原因ではなく根本原因にたどり着けます。
②Whatツリー:要素を分解する
「何で構成されているか?」を分解して、全体像を把握するときに使います。
【Whatツリーの例:売上の構成要素】
売上とは何か?
├─ 客数
│ ├─ 新規顧客
│ └─ 既存顧客
└─ 客単価
├─ 購入点数
└─ 商品単価
Whatツリーは「問題を正しく定義する」ために使います。「売上が低い」という漠然とした問題を、「新規顧客が少ないのか、客単価が低いのか」と具体化できます。
③Howツリー:解決策を導き出す
「どうやって解決するか?」を具体化するときに使います。
【Howツリーの例:新規顧客を増やす】
新規顧客をどう増やす?
├─ 認知を広げる
│ ├─ Web広告を増やす
│ └─ 展示会に出展する
├─ 来店率を上げる
│ ├─ キャンペーンを実施
│ └─ 口コミを増やす
└─ 成約率を上げる
├─ 営業研修を実施
└─ 提案資料を改善
Howツリーは、原因分析(Why)の後に使います。「なぜ」が分かったら、「じゃあどうするか」を考える流れです。
3つの使い分け早見表
| 種類 | 問い | 目的 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| Whyツリー | なぜ? | 原因追究 | 問題が発生したとき |
| Whatツリー | 何? | 要素分解 | 全体像を把握したいとき |
| Howツリー | どうやって? | 施策立案 | 解決策を考えるとき |
基本の流れは、Why(原因を探る)→ What(要素を整理)→ How(対策を考える)です。
ロジックツリーの質を決める「MECE」の原則
ロジックツリーを作るとき、必ず意識すべき原則があります。それがMECE(ミーシー)です。
MECEとは「漏れなくダブりなく」
MECE はMutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略です。
Mutually Exclusive:相互に排他的(ダブりがない)
Collectively Exhaustive:全体として漏れがない
簡単に言えば、「漏れなくダブりなく」分解するということです。
MECEが崩れると何が起こる?
MECEになっていないと、分析の精度が下がります。
【NG例:MECEになっていない分解】
社員の分類
├─ 正社員
├─ 契約社員
├─ 営業職
← 雇用形態と職種が混在(ダブり)
└─ ? ← 派遣社員が抜けている(漏れ)
【OK例:MECEになっている分解】
社員の分類(雇用形態別)
├─ 正社員
├─ 契約社員
└─ 派遣社員
ポイントは「分解の軸を統一する」ことです。
MECEチェックの3ステップ
作成したロジックツリーがMECEかどうか、以下の3つで確認しましょう。
【実例】管理職の日常業務でロジックツリーを使う
ここからは、実際の業務で使える具体例を3つ紹介します。
例①:売上低迷の原因分析(Whyツリー)
部長から「今月の売上が目標の80%だ。原因を分析してくれ」と言われたら?
【Whyツリー:売上が目標未達の原因】
なぜ売上が80%?
├─ 受注件数が減った(-15%)
│ ├─ 新規商談が減った
│ │ └─ 展示会が中止になった
│ └─ 失注率が上がった
│ └─ 競合が値下げした
└─ 客単価が下がった(-5%)
└─ 低価格商品の比率が増加
このように分解すれば、「売上が悪い」という漠然とした状況が、「展示会中止」「競合の値下げ」という具体的な原因に落とし込めます。
例②:業務棚卸し(Whatツリー)
残業削減のために「まず自分のチームの業務を整理しよう」となったら?
【Whatツリー:営業課の業務】
営業課の業務は?
├─ 顧客対応業務
│ ├─ 商談・提案(40%)
│ ├─ 見積作成(15%)
│ └─ アフターフォロー(10%)
├─ 社内業務
│ ├─ 日報・週報(10%)
│ ├─ 会議(15%)
│ └─ 経費精算(5%)
└─ その他(5%)
業務を可視化すれば、「会議が多すぎる」「日報に時間がかかりすぎている」など、削減ポイントが見えてきます。
プレイングマネージャーとして時間管理に悩んでいる方は、プレイングマネージャーの時間管理術|業務とマネジメントを両立する5つの実践テクニックもぜひ参考にしてください。
例③:残業削減の施策立案(Howツリー)
原因が分かったら、「どうやって解決するか」をHowツリーで考えます。
【Howツリー:残業を月20時間削減する】
どう削減する?
├─ 会議を減らす
│ ├─ 週次会議を隔週にする
│ └─ 会議時間を30分に制限
├─ 日報を効率化
│ ├─ テンプレートを作る
│ └─ 音声入力を導入
└─ 業務を自動化
└─ 見積作成ツールを導入
ロジックツリー作成で陥りがちな5つの失敗
ロジックツリーは便利なツールですが、使い方を間違えると効果が半減します。よくある失敗を5つ紹介します。
失敗①:分解の軸がバラバラ
同じ階層で「雇用形態」と「職種」が混在するなど、軸が統一されていない状態です。
失敗②:分解が浅すぎる
「売上が低い」→「新規が少ない」で終わってしまうケースです。
失敗③:MECEになっていない
重要な要素が抜けている、または同じ要素が複数の枝に含まれている状態です。
失敗④:問題と課題を混同している
これは昇格試験でも非常に多いミスです。「問題」は現状のギャップ、「課題」はやるべきことです。
失敗⑤:いきなりHowから始める
「どうやって解決するか」から考え始めると、的外れな施策になりがちです。
今日から使える!ロジックツリー作成の5ステップ
最後に、実際にロジックツリーを作る手順を5ステップで解説します。
Step1:テーマ(問い)を明確にする
まず「何について分解するか」を決めます。曖昧なテーマだと、分解も曖昧になります。
Step2:分解の軸を決める
「どんな切り口で分けるか」を先に決めます。
よく使う軸には「時間(過去・現在・未来)」「組織(部門・チーム・個人)」「プロセス(入力・処理・出力)」などがあります。
Step3:第1階層を書き出す
テーマに対して、最初の分解(大枠)を3〜5個書き出します。ここでMECEを意識しましょう。
Step4:さらに分解して深掘り
第1階層のそれぞれを、さらに細かく分解していきます。最低3階層、できれば4階層まで掘り下げましょう。
Step5:MECEをチェックする
最後に全体を見直して、漏れ・ダブりがないかを確認します。第三者に見てもらうのも効果的です。
まとめ:ロジックツリーは「管理職の共通言語」
ここまで、ロジックツリーの基本から実践的な使い方までをお伝えしました。
この記事のポイントまとめ
- ロジックツリーは「複雑な問題を構造化する」思考ツール
- 3種類の使い分け:Why(原因追究)→ What(要素分解)→ How(施策立案)
- MECEの原則:「漏れなくダブりなく」分解する
- よくある失敗:軸がバラバラ、分解が浅い、問題と課題の混同
- 5ステップ:テーマ決定→軸決定→第1階層→深掘り→MECEチェック
ロジックツリーは、管理職同士が「問題の構造」を共有するための共通言語です。
部下に報告を求めるとき「ロジックツリーで整理してきて」と言えば、話が早くなります。上司に説明するときも、ツリー構造で見せれば一目で理解してもらえます。
このスキルは、昇格試験のケーススタディや面接でも必ず評価されるポイントです。問題を構造化できる人は、管理職としての適性があると判断されます。
ロジックツリーを昇格試験で活かす方法は、以下の記事も参考になります。
まずは今日の業務で、1つでいいので「これはWhyツリーで分解してみよう」と試してみてください。使えば使うほど、思考が整理される感覚が掴めるようになりますよ。
あなたの思考力アップを応援しています!

