「最近、部下のやる気が感じられない」「何を言っても響かない気がする」——管理職になってから、そんな悩みを抱えていませんか?
私はこれまで営業部長として多くの部下をマネジメントし、昇格試験の面接官としても数百人の候補者を見てきました。そこで確信したのは、モチベーションが低いチームには、必ず「下げている仕組み」があるということです。
そして、その仕組みはほとんどの場合、上司自身の関わり方に原因があります。ちょっと厳しい話ですが、本当なんです。
この記事では、部下のモチベーションが下がる原因を整理した上で、管理職が今日から実践できる7つの具体的な方法を解説します。ハーズバーグの二要因理論や期待理論といった科学的な裏付けも交えて、精神論ではなく「再現性のある型」としてお伝えします。
✅ この記事を読むとわかること
- 部下のモチベーションが下がる5つの原因と見抜き方
- 科学的に裏付けされたモチベーション理論(2つだけ押さえればOK)
- 今日から使える7つの実践メソッド(Will-Can-Must、SBIフィードバックなど)
- シーン別・すぐ使える声かけ例
- やってはいけない5つのNG行動
結論:モチベーションは「上げる」より「下げない」が先
精神論では部下は動かない
結論からお伝えします。部下のモチベーションを上げたいなら、まず「下げている原因を取り除く」ことから始めてください。
「頑張れ!」「もっとやる気を出せ!」という声かけは、残念ながらほとんど効果がありません。むしろ、やる気が出ない理由があるのに精神論で押されると、部下は「この上司はわかってくれない」と心を閉じてしまいます。
まず「下がる原因」を特定してから打ち手を選ぶ
例えるなら、バケツに穴が空いているのに、水を足し続けているようなものです。まず穴を塞いでから、水を足す。順序が大事なんですよね。
だからこそ、この記事は「原因 → 理論 → 実践」の順で構成しています。自分のチームに当てはまる原因を見つけたら、対応する実践メソッドに飛んでください。
部下のモチベーションが下がる5つの原因
私の経験上、部下のやる気が下がる原因は大きく5つに分類できます。まずは自分のチームがどこに当てはまるかを確認してみてください。
❌ 部下のモチベーションが下がる5つの原因
- 原因①:仕事の意味・目的が見えない
- 原因②:正当に評価されていないと感じる
- 原因③:成長実感が得られない
- 原因④:上司との信頼関係が弱い
- 原因⑤:プライベート・健康の問題
原因①:仕事の意味・目的が見えない
「この作業、何のためにやってるんだろう」と部下が感じた瞬間、モチベーションは急降下します。
特に若手は、単に指示をこなすだけでは動きません。この仕事が顧客や組織にどう貢献するかが見えないと、エネルギーが湧かないんです。
原因②:正当に評価されていないと感じる
頑張っているのに、誰も見てくれていない。結果が出ても、特にフィードバックがない。こうした状態が続くと、「どうせやっても同じ」という諦めに変わります。
ここで厄介なのは、上司側は「ちゃんと見ているつもり」であることが多い点。見ていることを、言葉にして伝える必要があります。
原因③:成長実感が得られない
同じような仕事の繰り返しで、自分が去年より成長しているのか実感できない。これも大きな要因です。
特にミドル層の部下は、給与より成長機会を重視する傾向があります。スキルが伸びている実感がないと、転職を考え始める合図になります。
原因④:上司との信頼関係が弱い
「この上司の前では本音が言えない」「相談してもどうせ却下される」と感じると、部下は自ら動かなくなります。
信頼関係は一朝一夕には築けませんが、壊すのは一瞬です。約束を守る、発言を翻さない、部下の話を遮らない。基本的なことの積み重ねがすべて。
原因⑤:プライベート・健康の問題
仕事以外の問題——家族の介護、育児、体調不良、メンタル不調——が背景にあるケースもあります。この場合、職場側で全部解決はできませんが、話せる環境を用意することが大切です。
もし部下がメンタル不調の兆候を見せている場合は、専門的なサポートが必要です。厚生労働省の公式情報も参考になります。
【理論編】科学的に裏付けされた2つのモチベーション理論
ここからは少し理論の話です。「理論なんていいから早く方法を教えて」という方もいるかもしれませんが、この2つだけ押さえておくと、打ち手の精度が一気に上がります。
また、昇格試験の論文や面接でも頻出するので、管理職候補の方は覚えておいて損はありません。
ハーズバーグの二要因理論(衛生要因×動機づけ要因)
アメリカの心理学者ハーズバーグが提唱した理論で、満足を生む要因と、不満を生む要因は別物という考え方です。
✅ 衛生要因(不満を防ぐ要因)
- 給与・待遇
- 労働環境
- 職場の人間関係
- 会社の方針・管理体制
→ これらが不十分だと不満が生まれる。ただし、満たしても「モチベーションが上がる」わけではない。
✅ 動機づけ要因(満足・やる気を生む要因)
- 仕事そのものの達成感
- 承認されること
- 責任のある仕事を任されること
- 成長・昇進の機会
→ これらが満たされると、本当のモチベーションが生まれる。
つまり、給料を上げても一時的にしか効かない理由がここにあります。本当に動かすには、動機づけ要因にアプローチする必要があるんです。
ブルームの期待理論(期待×道具性×誘意性)
もう一つ押さえておきたいのが、ブルームの期待理論。人が行動する動機は、次の3つの掛け算で決まるという考え方です。
- 期待:頑張れば結果が出せる、という見込み
- 道具性:結果を出せば報酬が得られる、という見込み
- 誘意性:その報酬が自分にとって魅力的であること
この3つのうち、どれか一つでもゼロだとモチベーションはゼロになります。掛け算だからですね。
例えば、部下が「この目標、頑張っても達成できない」と思っていれば(期待ゼロ)、そもそも動きません。「達成しても、どうせ評価されない」と思っていれば(道具性ゼロ)、やはり動きません。
部下のやる気が出ない時、この3つのどこが欠けているかを見極めると、打ち手が絞れます。
内発的動機づけ vs 外発的動機づけの使い分け
もう一つ、知っておくべきなのが「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の違いです。
- 内発的動機づけ:仕事そのものへの興味・やりがいから湧き出るもの
- 外発的動機づけ:給与・昇進・表彰など、外からの報酬で生まれるもの
理想は内発的動機づけに転換していくこと。ただ、立ち上げ期は外発的動機づけで勢いをつけ、徐々に内発的なものへシフトさせるのが現実的です。
部下のタイプや状況に応じたリーダーシップの使い分けを解説。モチベーション管理と合わせて押さえたい基礎理論です。
【実践編】部下のモチベーションを上げる7つの方法
ここからが本題です。今日から実践できる7つの方法を、優先順位の高い順に解説します。
方法①:目標を「Will-Can-Must」で再設計する
Will-Can-Mustは、リクルートで広く使われる目標設計のフレームワークです。
- Will:本人がやりたいこと
- Can:本人ができること
- Must:組織として必要なこと
多くの上司は「Must」だけを部下に押し付けがち。でも、Willも織り交ぜて目標を設計すると、部下の内発的動機づけが一気に高まります。
1on1で「3年後どうなっていたい?」と聞き、その方向と今の仕事をどう接続できるかを一緒に考えてみてください。
方法②:承認は「成果」ではなく「プロセス」に向ける
「売上達成おめでとう!」これも悪くはないのですが、やや弱い。なぜなら、結果は運にも左右されるから。
本当に効くのは、プロセス(行動・努力・工夫)への承認です。
❌ ありがちなNG承認
- 「頑張ってるね」(抽象的すぎて響かない)
- 「すごいね」(評価が上から目線に感じる)
- 「売上達成おめでとう」(結果だけに反応)
✅ 効く承認の例
- 「A社提案書、前回より論点が3つに整理されていて読みやすかったよ」(具体的な行動)
- 「昨日のミーティングで、田中さんの意見を引き出そうとしていたのが良かった」(工夫への着目)
- 「この案件、最初は難しかったのに、しつこく顧客の本音を聞きに行ったのが勝因だね」(プロセスを評価)
プロセスを言語化して伝えると、部下は「自分のどの行動が価値を生んでいるか」を理解します。これが再現性のある成長につながります。
方法③:1on1で「聞く7割・話す3割」を徹底する
1on1は、今や管理職必須のスキルです。ただし、やり方を間違えるとただの雑談か、上司の説教タイムになります。
鉄則は、聞く7割・話す3割。部下に話してもらうのが目的です。
おすすめの問いかけ:
- 「最近、仕事で一番悩んでいることは?」
- 「今の業務で、もっと時間を使いたい領域はある?」
- 「半年後、どんな自分になっていたい?」
- 「私が上司として、もっとこうしてほしいことはある?」
最後の質問は勇気が要りますが、この一言で信頼関係が変わります。
1on1で使えるコーチング型の問いかけ技術を詳しく解説しています。
モチベーション管理の次のステップとして、中長期の育成視点で読むと効果的です。
方法④:裁量を渡す(仕事の進め方を任せる)
人は「自分で決めた」と感じるとき、最もモチベーションが高くなります。心理学でいう自己決定理論ですね。
期限とゴールは上司が示す。でも、進め方は部下に任せる。これだけで、部下の主体性は大きく変わります。
もちろん、新人に全部任せるのは無理。スキルと経験に応じて、任せる範囲を徐々に広げていきましょう。
方法⑤:フィードバックはSBIモデルで具体化する
SBIモデルは、フィードバックを構造化するための型です。
- S(Situation):状況・場面
- B(Behavior):部下の具体的な行動
- I(Impact):その行動が与えた影響
例:「昨日のA社との打ち合わせで(S)、君が競合比較の資料を自主的に用意してくれたことで(B)、先方の決裁がワンステップ早く進みそうだ(I)」
このフォーマットで伝えると、抽象的な褒め言葉ではなく、何が価値を生んだかが明確に伝わります。悪いフィードバックも同じ構造で伝えれば、人格攻撃にならず、行動修正につながります。
方法⑥:小さな成功体験をデザインする
期待理論を思い出してください。「頑張れば結果が出せる」という期待がゼロだと、部下は動きません。
だからこそ、最初から高い目標を与えるのではなく、小さく達成できる目標を意図的に設計しましょう。
成功体験が積み重なると、自己効力感が育ちます。自己効力感が育つと、より高い目標にも挑戦できるようになる。このスパイラルを作るのが管理職の仕事です。
方法⑦:上司自身のモチベーションを整える
最後に、意外と見落とされがちなポイント。
上司がどんよりしていたら、部下のモチベーションは絶対に上がりません。
部下は、上司の表情・姿勢・発言を思った以上に観察しています。疲れた顔で「頑張ろう!」と言われても、説得力ゼロですよね。
自分自身の睡眠・運動・休息をちゃんと管理する。チームのモチベーション管理は、実は自己管理から始まります。
シーン別・すぐ使える声かけ例
理論や方法論がわかっても、実際の言葉に変換できないと意味がありません。ここでは典型的な3シーンの声かけ例を紹介します。
成果を出した部下への承認
✅ 成果を出した部下へ(SBIモデル)
「今月のA社受注の件だけど(状況)、君が提案前に先方のIR資料まで読み込んで、経営課題と絡めた提案書を作ってくれたよね(行動)。おかげで単なるベンダー提案じゃなく、経営パートナーとして見てもらえる流れができた(影響)。ありがとう。この動き方、他の案件にも展開しよう。」
失敗した部下へのフィードバック
✅ 失敗した部下へ(SBI + 前向きな次へ)
「今日のミーティングで(状況)、論点整理がされないまま30分議論が流れたのが気になった(行動)。参加者が何を決めたいのか迷ったまま終わってしまったよね(影響)。次回は冒頭3分で『今日決めたいこと』を宣言する形にしてみよう。資料のテンプレ、一緒に作ろうか。」
ポイントは、「君が悪い」ではなく「その行動が」という主語。人格ではなく行動に焦点を当てれば、部下は受け止められます。
やる気が下がっている部下への1on1冒頭
✅ やる気が下がっている部下へ
「最近、ちょっと元気がないように見えるんだけど、気のせいかな。もし良かったら、今どんな状態か聞かせてもらえる? 仕事のことでも、それ以外でも。私が解決できなくても、まず話を聞きたい。」
「どうした!」「元気出せ!」ではなく、観察した事実を伝えて、相手に話す主導権を渡す。これが鉄則です。
やってはいけない!モチベーションを下げる上司の5つのNG行動
「上げる方法」を知るのと同じくらい大事なのが、「下げる行動をしない」こと。私が面接官として見てきた中で、部下から低評価を受けやすい管理職の共通パターンを5つ紹介します。
❌ モチベーションを下げる上司の5つのNG行動
- NG①:結果だけで評価する
- NG②:感情的に叱る
- NG③:他の部下と比較する
- NG④:言動が一致していない
- NG⑤:部下の私生活に踏み込みすぎる
NG①:結果だけで評価する
「数字を出したか、出さなかったか」だけで判断すると、部下は「過程の工夫は評価されない」と学習します。結果、短期的に刈り取れる案件だけに走り、組織の中長期的な資産が育たなくなります。
NG②:感情的に叱る
怒りで人を動かせる時代は終わりました。イライラをぶつけても、部下は萎縮するだけで成長しません。
言いにくいことを、角を立てずに伝える技術が必要です。アサーションと呼ばれるコミュニケーション技法が参考になります。
NG③:他の部下と比較する
「田中はできてるのに、なんで君はできないんだ」——これは最悪の一言です。比較された側のモチベーションが下がるのはもちろん、比較の材料にされた側も「自分が道具に使われている」と感じます。
比べるなら、他人とではなく過去の本人と。
NG④:言動が一致していない
「挑戦を評価する」と言いながら、失敗すると詰める。「残業を減らそう」と言いながら、自分は深夜までメールを送る。言動がズレていると、部下は上司の言葉を信じなくなります。
NG⑤:部下の私生活に踏み込みすぎる
「彼女できた?」「結婚しないの?」みたいな質問は、今の時代はNG。良かれと思っての関心も、受け取る側にはプレッシャーやハラスメントになります。
雑談はOK、でも踏み込むのは相手が話し始めた時だけ。これが鉄則です。
昇格試験でも問われる「部下育成力」
ここまで読んでいただいた管理職候補の方、朗報です。この記事で学んだ内容は、そのまま昇格試験の論文・面接で使えます。
なぜなら、昇格試験で問われるテーマの定番が「部下育成」「チームマネジメント」「モチベーション管理」だから。
論文では、ハーズバーグの二要因理論や期待理論を引用しつつ、自分の具体的な実践経験と結びつけて書くと評価が高まります。面接でも「やる気のない部下にどう対応しますか?」という質問は頻出です。
つまり、日々のマネジメント実践そのものが、最強の試験対策になるということ。ぜひ意識的に取り組んでみてください。
モチベーション管理を含む、面接頻出テーマの回答例を50問分まとめています。
モチベーション管理は、管理職に求められる5つの機能の一部です。全体像をここで押さえておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 部下のモチベーションを上げるには、まず何から始めるべきですか?
最優先は「下げている原因」を特定することです。上げる施策より、下げている要因の除去が先。1on1で部下の本音を聞き、仕事の意味・評価・成長実感・信頼関係のどこに不満があるかを把握してから、適切な打ち手を選びましょう。
Q2. 若手(Z世代)の部下のモチベーションを上げるコツはありますか?
若手には「仕事の意味」と「成長実感」が特に効きます。タスクを渡す際に背景と目的をセットで伝え、小さな達成を見逃さず承認する。給与や肩書きよりも、自分の成長につながる経験を重視する傾向があるため、ストレッチアサインメントと丁寧なフィードバックをセットで設計するのが有効です。
Q3. 褒めても響かない部下にはどう接すれば良いですか?
抽象的な称賛ではなく、具体的な行動を言語化することが重要です。「頑張ってるね」ではなく「A案件の資料、前回より論点が3つに整理されていて読みやすくなった」のように、何がどう良かったかを伝える。SBIモデル(Situation-Behavior-Impact)を使うと、プロセスへの承認が自然にできます。
Q4. モチベーションの低い部下を無理に上げる必要はありますか?
無理に上げる必要はありません。ただし「下げ続けている原因が職場側にないか」は確認が必要です。仕事の割り振りが偏っていないか、評価が伝わっているか、成長機会があるかを見直し、環境を整える。それでも本人が動かないなら、別の役割への異動も選択肢です。
Q5. 部下のモチベーション管理は昇格試験でも問われますか?
はい、頻出テーマです。論文では「部下育成における課題と対策」、面接では「やる気のない部下への対応」といった形で問われます。ハーズバーグの二要因理論や期待理論などの基礎理論を押さえた上で、自分の具体的な実践経験を語れるよう準備しておくと有利です。
まとめ:「下げない仕組み」を作れば、モチベーションは自然に上がる
部下のモチベーションを上げるために大切なのは、派手な施策ではなく「下げない仕組み」を淡々と積み上げることです。
この記事の要点をおさらいします。
✅ 今日から始める3ステップ
ステップ①:原因を特定する
チームのモチベーションが低い原因は、仕事の意味・評価・成長・信頼・私生活のどれか。1on1で本音を聞く。
ステップ②:下げる行動を止める
結果だけの評価、感情的な叱責、他者との比較。これらを今日からやめる。
ステップ③:上げる打ち手を一つ選ぶ
7つの方法から、自分のチームに合う一つを選んで徹底する。全部やろうとして挫折するより、一つを続ける方が効果的。
モチベーション管理は、管理職の仕事の中でも特に報われにくい領域です。すぐに数字に表れないし、感謝もされない。でも、これをやり続けられる人だけが、本物のマネージャーになれます。
次の1on1で、「最近、どんなことが楽しい?」と聞くところから始めてみてください。ここが、すべての出発点です。
